「自分は弁護士に向いていないかもしれない…」
「どんな人が弁護士に向いているの?」
「適性がないまま弁護士を目指して後悔したくない」
そんな不安や悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。
弁護士は法律の専門家として高度な知識と責任が求められる一方で、性格や価値観によってはストレスを感じやすい仕事でもあります。
向き・不向きを見極めずに目指してしまうと、司法試験の勉強中や実務の中で挫折してしまう可能性もあります。
だからこそ、弁護士に求められる資質や、向いていないとされるタイプの特徴を知ることは、進路選択において非常に重要です。
この記事では、弁護士に向いていない人の特徴を具体的に解説するとともに、どんな人が向いているのかという適性についても詳しく紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
弁護士に向いていない人の特徴・性格8つ
以下の特徴・性格に多く当てはまる場合、弁護士の仕事で困難を感じる場面が多いかもしれません。
- 自己主張するのが苦手な人
- ストレスに弱い人
- 感情的になりやすい人
- 飽き性で諦めが早い人
- マルチタスクが苦手な人
- コミュニケーションが苦手な人
- 倫理観が欠如している人
- 費用対効果ばかり気にする人
もちろん、これらの特徴が一つでも当てはまれば絶対に向いていないというわけではありません。
しかし、自身の性格や価値観を客観的に把握し、弁護士という職業の厳しい側面を理解しておくことは、後悔のないキャリア選択のために不可欠です。
ここからは、それぞれの特徴について詳しく解説します。

①自己主張するのが苦手な人
自己主張するのが苦手な人は、弁護士があまり向いていないかもしれません。
弁護士の重要な仕事の一つに、依頼人の代理人として法廷や交渉の場で意見を述べることがあります。
そこでは、相手方の弁護士や検察官、そして裁判官といった法律の専門家を相手に、臆することなく自らの主張を論理的に展開しなくてはなりません。
不利な状況であっても、法的な根拠に基づいて堂々と反論し、依頼人の権利を擁護する強い姿勢が求められます。
主張が苦手な人は、相手の気迫や主張に押されてしまい、依頼人の正当な利益を十分に守ることが難しくなる可能性があります。
ただし、普段の生活では自己主張が苦手でも、依頼人や法定などの場では、論理的に自信をもって主張できる人であればむしろ弁護士は向いている可能性が高いです。
②ストレスに弱い人
ストレスに弱い人も、弁護士はやや不向きです。
弁護士の仕事は、極めて強い精神的ストレスに晒される場面が連続します。
依頼人の人生を左右するような重大な案件を扱う責任の重さは、計り知れないプレッシャーとなります。
また、対立する当事者やその代理人との厳しい交渉、長時間にわたる労働、複雑な人間関係など、ストレスとなる要素はさまざまです。
ストレス耐性が低いと、こうした重圧に耐えられず、心身の健康を損なってしまう恐れがあります。
精神的に不安定な状態では、物事を冷静に分析し、的確な判断を下すことも困難になるでしょう。
結果として、業務の質が低下し、依頼人に不利益をもたらすことにもつながりかねません。
日々のプレッシャーを乗り越え、自分自身を適切に管理できる精神的な強さがなければ、弁護士として長く活動を続けることは難しいです。
③感情的になりやすい人
弁護士に向いていない人の性格として、感情的になりやすい人が挙げられます。
弁護士にとって、依頼人が抱える問題に真摯に耳を傾けて共感する姿勢は大切です。
しかし、依頼人に感情移入しすぎると、客観的かつ冷静な判断が難しくなります。弁護士の役割は、あくまで法律に基づき、論理的な思考で問題を解決に導くことです。
個人的な感情に流されてしまうと、法的な見通しを誤ったり、交渉で不利な妥協をしてしまったりするリスクがあります。
特に法廷では、相手方から意図的に挑発されるような場面も想定されます。
そのような状況で感情的になってしまえば、弁護士としての品位を疑われ、裁判官に与える心証も悪くなるでしょう。
常に冷静さを保ち、いかなる状況でも私情を挟まずに、事実と法律だけを頼りに判断できる精神的なコントロール能力が不可欠です。
④飽き性で諦めが早い人
弁護士の仕事は、地道で根気のいる作業の連続で、飽き性で諦めが早い人も弁護士は不向きと言えます。
一つの事件を解決するためには膨大な量の判例や資料を読み込み、証拠を一つひとつ精査し、緻密な準備書面を作成する必要があります。
案件によっては、解決までに数年という長い歳月を要することも決して珍しくありません。
また、弁護士が扱う事件は依頼者の人生を左右するものも多く、たとえ勝ち筋が見えない事件だとしても、粘り強く最後まで戦うことが非常に大切です。
地味な作業に飽きて集中力を失ったり、頑張っても無駄だと考えて早くに諦める人は、弁護士の業務を遂行するのが困難です。
困難な壁にぶつかったとしても、諦めずに粘り強く解決の糸口を探し続ける忍耐力が求められます。
⑤マルチタスクが苦手な人
マルチタスクが苦手な人は、弁護士の仕事が不向きと言えるでしょう。
多くの弁護士は、常に複数の案件を同時に抱え、並行して業務を進めています。
例えば、ある案件の準備書面の作成を進めながら、別の案件で依頼人との打ち合わせを行い、さらに別の案件で裁判所に出廷するといった状況は日常茶飯事です。
それぞれの案件には異なる締め切りがあり、緊急度や重要度もさまざまです。
一度に複数の処理を行う能力は必要はありませんが、タスクの優先順位を適宜判断し、計画的に時間を管理する能力は重要になります。
複数の業務を同時に管理しようとしても、ものごとをうまく整理できない人は、弁護士の仕事のペースについていくのが難しいかもしれません。
⑥コミュニケーションが苦手な人
コミュニケーションが苦手な人は弁護士はあまり向いていないです。
弁護士は法律を扱う仕事であると同時に、人と深く関わる仕事でもあります。人と人とのコミュニケーションとして、以下の能力が必要です。
- 依頼者の話を効く力
- 依頼者にわかりやすく説明する力
- 交渉を進める力
依頼人が何を悩み、何を望んでいるのかを正確に把握するため、話をじっくりと聞く傾聴力が不可欠です。
そのうえで、専門的な法律の内容を、一般の人にも理解できるようわかりやすく説明する能力も求められます。
さらに、裁判官や検察官、相手方の弁護士など、さまざまな立場の人と円滑に交渉や調整を進める必要もあります。
特別優れたコミュニケーション能力は必要ありません。しかし、人と話すこと自体に強い苦手意識があったり、相手の意図を汲み取ることが苦手だったりすると、業務のあらゆる場面で支障が生じるでしょう。
⑦倫理観が欠如している人
弁護士は、基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命とする極めて公共性の高い職業です。
そのため、弁護士法によって高い品位と倫理観を保つことが厳しく義務付けられています。
依頼人の秘密を守る守秘義務や、依頼人の利益に反する行為を禁じる利益相反の規定など、遵守すべき職業倫理は多岐にわたります。
もし、目先の利益や個人的な都合のために嘘をついたり、不正な手段を用いたりするなど、倫理観に欠ける行動をとれば弁護士としての信頼を根本から失います。
そのような行為は懲戒処分の対象となり、最悪の場合は弁護士資格を失うことにもなります。
誠実さや公正さを欠く人は、弁護士という職業に就くべきではありません。
⑧費用対効果ばかり気にする人
費用対効果ばかり気にする人は、弁護士の仕事が難しく感じるかもしれません。
弁護士も事業として事務所を経営している以上、収益を考えることは当然必要です。
しかし、その視点が行き過ぎて、儲かるかどうかという費用対効果だけを判断基準にしてしまう人は、弁護士の本質的な役割を見失う可能性があります。
弁護士の使命には、経済的に恵まれない人々の権利を守ることも含まれています。
例えば、国が費用を負担する国選弁護(営利性よりも公共的な意義を重視)や、採算が取りにくい少額の案件であっても、社会的な意義は非常に大きいものです。
利益にならないからといって、困っている人からの相談を無下に断るような姿勢は、弁護士に求められる公共の精神に反します。
ビジネスとしての側面と社会正義を実現するという使命のバランスを理解し、人助けへの情熱を持てない人には務まらない仕事といえるでしょう。
弁護士に向いている人の特徴・性格は?適性がある人7つ
次のような特徴や性格に当てはまる人は、弁護士に向いている・適性がある可能性が高いです。
- 高い正義感と責任感がある人
- 社会に貢献したい意欲がある人
- 人に寄り添って考えることができる人
- 常に公平で客観的な視点を持てる人
- 冷静沈着で判断力が高い人
- 誰とでも分け隔てなく接せる人
- 持続的な学習意欲がある人
それぞれ詳しく解説します。
①高い正義感と責任感がある人
弁護士の根幹をなすのは、不正を許さず、弱い立場の人を守りたいという強い正義感です。
理不尽な状況に置かれた依頼人を救済することに使命感を持てる人は、弁護士の適性が高いといえます。
また、依頼人の人生を大きく左右する可能性がある仕事であるため、一つひとつの業務に対して最後までやり遂げる強い責任感が不可欠です。
難しい案件であっても途中で投げ出すことなく、依頼人の利益を最大化するために全力を尽くす姿勢が求められます。
社会の矛盾や問題に対して真摯に向き合える人こそ、弁護士として活躍できるでしょう。
②社会に貢献したい意欲がある人
弁護士の仕事は、依頼人を助けることで、よりよい社会の実現に貢献するという側面を持っています。
自分の専門知識やスキルを私的な利益のためだけでなく、社会全体の利益のために役立てたいという強い意欲がある人は弁護士に向いています。
例えば、人権問題や環境問題、消費者問題など、社会的に意義の大きい分野で活動することにやりがいを感じられるでしょう。
また、経済的な理由で法的サービスを受けられない人々を支援する活動にも、積極的に取り組むことができます。
社会貢献を自己実現と捉えられる人にとって、弁護士は理想的な職業です。
③人に寄り添って考えることができる人
人に寄り添って考えることができる人は弁護士の仕事が向いています。
弁護士へ相談に来る依頼人の多くは、深刻な悩みやトラブルを抱え、精神的に追い詰められています。
法律の専門家として的確なアドバイスをするだけでなく、まずは依頼人の話に真摯に耳を傾け、その苦しみや不安に寄り添う姿勢が非常に重要です。
相手の立場や感情を深く理解しようとする共感力があれば、依頼人は安心して心を開き、事件解決に必要な事実関係を話してくれるでしょう。
この信頼関係が弁護活動を行うための土台となります。
ただし、感情移入しすぎず、専門家としての客観的な視点を保つバランス感覚も必要です。
人の痛みを理解し、その人のために力を尽くしたいと思える人は、依頼人から信頼される優れた弁護士になれるでしょう。
④常に公平で客観的な視点を持てる人
弁護士には、常に公平で客観的な視点を持つ能力が必要です。
弁護士が扱う案件は、当事者の主張が真っ向から対立するものがほとんどです。
依頼人の主張に耳を傾けることは重要ですが、その内容を鵜呑みにするのではなく、常に客観的な証拠に基づいて事実関係を冷静に分析する姿勢が求められます。
自分の思い込みや先入観をなくし、あらゆる可能性を考慮しながらものごとを多角的に見る力が必要です。
この客観的な視点があるからこそ、依頼人に対して的確な解決策を提示することができます。
また、裁判官を説得するうえでも、主観的な訴えだけでなく、客観的な事実と法的な根拠に基づいた論理的な主張が不可欠です。
⑤冷静沈着で判断力が高い人
弁護活動では、予期せぬ事態が発生することが少なくありません。
相手方から想定外の主張や証拠が提出されたり、証人が予想と違う証言をしたりすることもあります。
そのような不測の事態に直面したとき、動揺してパニックに陥るのではなく、冷静さを保ち、瞬時に最善の対応策を判断する能力が弁護士には求められます。
限られた情報と時間の中で、依頼人にとって最も有利な選択は何かを的確に見極める高い判断力が必要です。
冷静沈着な姿勢は依頼人に安心感を与え、交渉や裁判を有利に進めるためにも重要となります。
プレッシャーのかかる場面でも落ち着いて論理的に思考し、次の一手を打てる人は弁護士の適性が高いと言えます。
⑥誰とでも分け隔てなく接せる人
誰とでも分け隔てなく接せる人や、うまくコミュニケーションがとれる人は弁護士の適性があります。
弁護士は以下のように、さまざまな人と関わる仕事です。
- 依頼人
- 裁判官
- 検察官
- 相手方の弁護士
- 企業の担当者
- 事件の関係者
など
このように、社会的地位や考え方、性格も多種多様な人々と円滑にコミュニケーションをとり、良好な関係を築く能力が弁護士には不可欠です。
特定のタイプの人としかうまく話せない、人によって態度を変えるといった人の場合、業務に支障をきたす可能性があります。
誰に対しても敬意を払い、分け隔てなく誠実に接する姿勢は、プロの弁護士としての信頼につながります。
優れたコミュニケーションスキルは必要ありませんが、誰とでも分け隔てなく接すことができる人、社交性がある人は、弁護士として幅広い分野で活躍できるでしょう。
⑦持続的な学習意欲がある人
司法試験に合格して「弁護士になったら勉強は終わり」ではありません。
法律は社会の変化に合わせて頻繁に改正されますし、新しい判例も次々と生まれます。
また、ITや医療、金融など、担当する案件の背景にある専門分野の知識を深めることも必要です。
常に最新の情報をキャッチアップし、自分の知識をアップデートし続ける持続的な学習意欲がなければ、質の高い法的サービスを提供し続けることはできません。
そのため、持続的な学習意欲がある人、知的好奇心が旺盛で新しいことを学ぶのが好きな人は、弁護士という職業に非常に向いています。
弁護士はどんな仕事?社会における役割
弁護士は、個人や企業が抱えるさまざまな問題に対し、法律の専門家として法的な解決をサポートする仕事です。
弁護士法の第1条で「弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする」と定められている通り、社会正義を実現することが弁護士の社会的役割です。
引用:弁護士法|法令検索 e-GOV
弁護士の業務は多岐にわたりますが、主な業務内容として以下が挙げられます。
- 刑事事件で被疑者・被告人の権利を守る弁護活動
- 民事事件でトラブルの当事者の代理人として交渉や訴訟を行う活動
- 企業に対して法的な助言を行う顧問活動
など
このように、弁護士は法律というルールを用いて社会の紛争を公正に解決へと導きます。
そして、人々の権利が不当に侵害されることのないよう監視する番人としての役割を担っているのです。

弁護士はつらいことが多い?仕事がつらいときの対処法
弁護士の仕事は、社会的な使命感ややりがいが大きい一方で、つらいと感じる場面も少なくありません。
例えば、依頼人の人生を背負うプレッシャー、対立相手との厳しい折衝、長時間労働が常態化しやすいなど、心身ともに大きな負担がかかります。
仕事がつらいと感じたときは、転職して事務所を移動することも可能ですし、独立開業して仕事の自由度を高めることも可能です。
そのほか、企業内弁護士に転職するなど、環境を変えることで解決することも多いです。
そのため、今まさに弁護士を目指している人で、実際に弁護士になってみて仕事がつらいと感じたら、無理せず転職などの選択肢も検討しましょう。
司法試験に合格したという経歴は、弁護士はもちろん、弁護士以外のキャリア形成において大きなアドバンテージになります。
弁護士は一生使える資格?定年がなく年配でも現役で働ける
弁護士資格は、まさに「一生使える」強力な資格といえます。医師などと同様、弁護士には定年という概念がありません。
自分の気力と体力が続く限り、年齢に関係なく現役で働き続けることが可能で、むしろ弁護士の仕事は経験が非常に重視される世界です。
年齢を重ねることで培われた豊富な実務経験や専門知識、そして幅広い人脈は、若い弁護士にはない大きな武器となります。
また、働き方の選択肢が非常に多いのも弁護士の魅力の一つです。
法律事務所でパートナーを目指すだけでなく、独立開業して自分のペースで仕事をしたり、企業の法務部でインハウスローヤーとして活躍したり、官公庁で働く道もあります。
ライフステージや価値観の変化に合わせてキャリアパスを柔軟に選択できるため、長期的な視点で人生設計を立てやすい資格です。

弁護士を目指すなら司法試験に合格する
弁護士になるためには、国家試験の中でも最難関とされる司法試験に合格しなければなりません。
司法試験には受験資格があり、その受験資格を得るには、法科大学院(ロースクール)の課程を修了するか、司法試験予備試験に合格する必要があります。
どちらのルートを選ぶにしても、合格には膨大な量の法律知識を習得し、論理的な思考力や文章表現力を磨く必要があります。
そのためには、数年単位での長期的な学習計画を立て、強い意志を持って勉強し続けることが不可欠です。
司法試験や予備試験を独学で合格することは不可能ではありませんが、予備校や学校を利用するのが一般的で、多くの受験生が予備校出身者です。
予備校を活用すれば、長年のノウハウが詰まった教材やカリキュラムを利用でき、効率的に学習することができます。
「どの予備校を選べばいいかわからない」「予備校の違いが知りたい」という方は、以下の記事で予備校を比較解説していますので、ぜひ参照ください。

まとめ
弁護士は責任が重く、精神的なタフさや高度な対人スキルが求められる職業であるため、ストレスに弱い人や自己主張が苦手な人には向いていないとされます。
一方で、高い正義感や冷静な判断力、継続的な学習意欲を持つ人は、弁護士に適性があると言えるでしょう。
弁護士の仕事は社会的な意義も大きく、年齢を問わず長く活躍できる点も魅力です。
厳しさもある反面、やりがいや誇りを持てる職業ですので、向き・不向きを正しく理解したうえで、司法試験合格を目指して準備を始めてみてはいかがでしょうか。

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