「行政書士試験って、誰でも受かるって本当?」
「難しい試験のはずなのに、なぜそんな噂があるの?」
「合格するために必要な学習戦略は?」
こうした疑問を抱えている方も多いのではないでしょうか。
行政書士試験は、法律初学者でも挑戦できる国家資格として人気がありますが、合格率は例年10%〜13%前後と決して簡単な試験ではありません。
それにもかかわらず「誰でも受かる」と言われることがあります。
この記事では、行政書士試験の実際の難易度や、「誰でも受かる」と言われる理由を分析するとともに、合格を目指すための効果的な学習戦略について詳しく解説します。
これから試験に挑む方や、本当に合格できるか不安な方は、ぜひ最後までご覧ください。
行政書士試験は誰でも受かるって本当?
「行政書士は誰でも受かる」ということはありえません。
試験の合格率は例年10〜13%前後で推移しており、決して容易な試験ではありません。
合格するためには、法律の基礎知識を習得し出題範囲を網羅した計画的な学習が必要です。
行政法や民法などの主要科目に加え、一般知識科目も含めて幅広い知識が求められます。
一方で、行政書士試験は年齢や学歴に関係なく受験可能であり、多様なバックグラウンドを持つ人々が挑戦できる国家資格です。
そのため、「誰でも受かる」というよりも、「適切な準備と努力をすれば誰にでもチャンスがある」と捉えるのが現実的です。
行政書士試験の難易度は高い?6つの視点から徹底分析
行政書士試験の難易度を正確に把握するためには、複数の要素を総合的に考慮する必要があります。主な要素には以下があります。
- 合格率
- 合格基準
- 受験資格
- 必要な勉強時間
- 出題形式
- 試験科目の範囲
それぞれ詳しく解説します。
①合格率は例年10〜13%
行政書士試験の合格率は、例年10〜13%前後で推移しています。過去の合格率は次のとおりです。
| 合格率 | |
|---|---|
| 令和6年度 | 12.90% |
| 令和5年度 | 13.98% |
| 令和4年度 | 12.13% |
| 令和3年度 | 11.18% |
| 令和2年度 | 10.72% |
| 令和元年度 | 11.48% |
| 平成30年度 | 12.70% |
| 平成29年度 | 15.72% |
| 平成28年度 | 9.95% |
| 平成27年度 | 13.12% |
参照:最近10年間における行政書士試験結果の推移|一般財団法人 行政書士試験研究センター
他の法律系国家資格と比較すると、行政書士試験の難易度は中程度とされています。
たしかに、税理士試験などと比べると難易度は低いですが、決して簡単な試験ではありません。
合格率の数字だけで難易度を判断するのではなく、試験の出題範囲や問題の質、受験者の準備状況など、複数の要因を考慮することが重要です。


②合格基準は3つで足切りラインがある
行政書士試験の合格基準は、以下の3つの要件をすべて満たすことです。
- 法令等科目で5割以上得点する(122点/244点を得点)
- 一般知識等科目で約4割以上得点する(24点/56点を得点)
- 試験全体で6割以上得点する(180点/300点を得点)
試験全体の得点が180点を超えたうえで、法令等科目(憲法、行政法、民法、商法、基礎法学)と基礎知識科目(一般知識、情報通信、文章理解など)でも最低点数をクリアしなければなりません。
つまり、法令科目と基礎知識科目の足切りラインを越えなければ、仮に試験全体で6割以上を獲得しても不合格となります。
特に、基礎知識科目は軽視されがちですが、足切りラインを超えるためには十分な対策が必要です。記述式問題も含まれるため、表現力や論理的思考力も求められます。

③受験資格には制限がない
行政書士試験は、年齢、学歴、国籍などに関係なく、誰でも受験することができます。
キャリアチェンジやスキルアップを目指す人々にとって、多くのチャンスがある試験と言えます。
例えば、高校卒業後すぐに受験できるほか、社会人として働きながら資格取得を目指すことも可能です。
ただし、受験資格に制限がないからといって、試験が簡単というわけではありません。
合格するためには、法律に関する広範な知識と理解が求められ、計画的な学習が不可欠です。
④勉強時間の目安は500〜1,000時間

行政書士試験に合格するために必要な勉強時間は、一般的に500〜1,000時間とされています。
法律の基礎知識がある人や学習経験が豊富な人であれば、500〜800時間程度の学習で合格を目指すことも可能です。
一方、法律に初めて触れる初心者や独学で学習する場合は、800〜1,000時間以上の学習時間が必要とされます。
勉強時間をしっかり確保するためには、日々のスケジュール管理が重要です。
例えば、平日に2〜3時間、休日に5〜6時間の学習時間を確保することで、約1年間で合格に必要な学習時間を満たすことができます。
また、学習の質を高めるためには、効率的な学習方法や適切な教材の選定も重要です。
自分のライフスタイルや学習スタイルに合わせた学習計画を立て、継続的に学習を進めることが合格には欠かせません。

⑤出題形式は択一式、多肢選択式、記述式がある
行政書士試験では、択一式、多肢選択式、記述式の3つの出題形式が採用されています。
択一式は、5つの選択肢から正答を1つ選ぶ問題で、全体の大部分を占め、基礎知識の正確な理解が求められます。
多肢選択式は、文章の一部を完成させる形で複数の選択肢を組み合わせる問題で、やや高度な論点を含むことが多く、理解の深さを測る形式です。
記述式(行政法・民法から出題)は、40字程度で論理的かつ簡潔に答えを書く問題であり、配点が高いため対策の優先度が高いです。
一般的には、○×で答えるような試験であればわからなくても当たる可能性があり、難易度は低くなります。
一方、行政書士試験は記述式の配点が約20%占めており、その他さまざまな形式の問題が出題されるため、出題形式としても難しい試験となります。

⑥試験科目が多くて幅広い
試験科目が多くて幅広いのも、行政書士試験の難易度が高い理由のひとつです。
行政書士試験の出題科目は、法令科目として「行政法、民法、憲法、商法、基礎法学」が、一般知識科目として「政治・経済・社会、情報通信、個人情報保護、文章理解」が含まれます。
特に、配点が高い行政法と民法を重点的に学習する必要がありますが、一般知識も足切り対象となるため、確実に得点を取れるような対策が必要です。
また、法令科目は、条文理解・判例・論点整理が求められるため、体系的な学習が重要になります。
行政書士試験に合格するためには、各科目の出題範囲を網羅しつつ、頻出分野を中心に学習を進めていかなければなりません。
行政書士試験に3ヶ月で合格した人がいる?法律の基礎知識がある人
「行政書士試験に3ヶ月で合格した」といった体験談を、インターネット上で見かけたことがある人もいるかもしれません。
しかし、3ヶ月という短期合格はあくまで例外であり、誰にでも再現できるものではありません。
実際に3ヶ月で合格した人の多くは、法学部出身者や法律系資格の学習経験者で、すでに法律の基本的な用語や考え方に慣れている人の可能性が非常に高いです。
そのため、ゼロからの学習を始める場合とは大きく条件が異なります。
一般的な受験生が同じようなスケジュールで合格を目指すのは現実的ではなく、無理な計画は途中で挫折する可能性を高めるだけです。
合格のためには、しっかりと学習期間を確保し、自分に合った学習スタイルで継続して取り組むことが重要です。
法律の基礎知識があれば行政書士試験は簡単?
法律の基礎知識があるからといって、行政書士試験に簡単に合格できるわけではありません。
たしかに、基礎知識がある人は、行政書士試験において有利な立場にあるのは確かです。
特に、法学部出身者や法律実務経験のある人は、行政法や民法の基本的な構造や考え方をすでに理解しているため、初学者よりも学習効率が高く、理解スピードも早くなります。
しかし、それはスタート地点の話であって、行政書士試験に合格するためには、誰であっても相応の勉強量が必要です。
試験では条文知識だけでなく、実際の出題形式に即した応用的な理解や判断力、記述力が求められます。
そのため、法律の基礎知識があるからといって油断せず、過去問演習や記述対策など実践的なトレーニングを積むことが不可欠です。
結局のところ、基礎知識はあくまで有利な土台であり、合格はそれを活かした努力次第と言えます。
試験合格には半年〜2年ほどかかる
行政書士試験の合格に必要な学習期間は、一般的に半年〜2年程度と考えられます。勉強ペース別にシミュレーションした表が以下です。
| 勉強ペース | 500時間にかかる期間 | 1,000時間にかかる期間 |
|---|---|---|
| 1日1時間(週7時間) | 約1年4カ月 | 約2年9カ月 |
| 1日3時間(週21時間) | 約5.5カ月 | 約11カ月 |
| 週20時間 | 約6カ月 | 約11.5カ月 |
| 平日3時間+土日5時間 (週25時間) | 約4.5カ月 | 約9カ月 |
すでに法律の知識がある場合や、1日の学習時間を多く確保できる人は半年程度でも合格が現実的です。
しかし、社会人など多忙な人や初学者、独学で勉強する人は1〜2年の長期的な計画が必要です。
また、短期間で結果を出すことを目指しすぎると、かえって非効率になり、知識の定着を妨げる可能性があります。
時間をかけて丁寧に学習を進めることで、確実な理解と応用力が身につくので、焦らず着実に学習を積み重ねる姿勢が大切です。
行政書士試験は誰でも受かると言われる理由
行政書士試験は難易度の高い試験であるものの、「誰でも受かる」と言われる理由には、以下が考えられます。
- 弁護士や税理士試験などと比べると易しいから
- 低学歴・無資格からの逆転例が与える影響
- 法律の基礎知識が十分なら簡単に感じるから
- SNSやネット記事で偏った体験談だけが広がっているから
- 試験には免除制度があるから
それぞれ詳しく解説します。
理由①弁護士や税理士試験などと比べると易しいから
行政書士試験が「誰でも受かる」と言われる背景には、他の法律系資格との比較によるイメージが影響しています。
例えば、弁護士(予備試験、司法試験)や税理士試験などと比べると、行政書士試験の出題範囲や合格基準は確かに易しいとされています。
司法試験は法科大学院の修了が原則必要であり、合格率も非常に低いため専門性・難易度共に高い試験です。
それに対して、行政書士試験は受験資格がなく、独学でも合格可能とされている点で、比較的身近に感じられる国家資格です。
しかし、この評価はあくまでも相対的なものであり、十分な学習と準備が必要なことには変わりありません。
理由②低学歴・無資格からの逆転例が与える影響
行政書士試験は、学歴や過去の資格保有状況に関係なく受験できるため、低学歴・無資格からの合格者が多く存在します。
こうした「逆転合格」エピソードは、SNSやブログを通じて拡散され、「誰でも受かる」という印象を広める一因になっています。
たしかに、これらの例は努力次第で道が開けることを示す希望の象徴であり多くの人に勇気を与える要素です。
しかし、それら成功の裏には、相応の努力や学習時間、精神的な継続力があるのも事実です。
行政書士試験の受験を検討している人は、成功例の努力の過程にも目を向け、現実的な計画と覚悟を持って臨むことが重要です。

理由③法律の基礎知識が十分なら簡単に感じるから
法律の基礎知識を十分に持っている人にとって、行政書士試験は比較的難易度が低く感じられることがあります。
法学部出身者や日常的に法律を扱う仕事に従事している人であれば、試験で問われる基本的な概念や条文などがすでに身についており、学習のハードルが低くなるためです。
しかし、これはあくまで一部の人に限った話であり、多くの受験生にとっては、法律の専門用語や論点に慣れるまでに時間がかかります。
行政書士試験の難易度は、受験者の知識量や背景によって大きく異なります。
一部の人が簡単と感じたとしても、それが試験の本質とは限らないという点に注意が必要です。
理由④SNSやネット記事で偏った体験談だけが広がっているから
インターネットやSNS上では、行政書士試験に合格した人の成功体験が数多く投稿されています。
成功体験は学習者のモチベーション向上につながりますが、学習過程での困難や失敗、長期にわたる努力など、ネガティブな要素が省略されていることが多くあります。
その結果、短期間での合格や簡単に受かるといった印象が強まり、誰でも受かるという誤解を生む要因となっています。
また、不合格体験や挫折した話はあまり共有されない傾向にあり、情報のバランスが偏りがちです。
情報を参考にする際は、発信者の前提条件や背景を考慮し、自分に合った現実的な戦略を立てるよう心がける必要があります。


理由⑤試験には免除制度があるから
行政書士試験には、一部の受験者に対して試験の免除制度が設けられています。
たとえば、公務員試験などで一定の経験を積んでいる人や特定の国家資格を持つ者は、試験が免除される可能性があります。
この制度により、特定の受験者は学習負担が軽減されることになり、行政書士試験が簡単と認識される一因のひとつです。
以下の記事では、試験の免除制度「特認制度」について詳しく解説しているので、気になる方はぜひあわせてご覧ください。

行政書士試験に合格するための学習戦略
行政書士試験に合格するための学習戦略には以下があります。
- 出題傾向を見極めて学習配分を考える
- 民法と行政法は得点源なので重点的に学習する
- 基礎知識は満点ではなく基準点を目指す
- 記述問題は訓練で構成力や表現力を高める
- 模試と過去問で弱点を潰していく
それぞれ詳しく解説します。

①出題傾向を見極めて学習配分を考える
行政書士試験に合格するためには、過去問を分析し出題傾向を見極めることが非常に重要です。
頻出分野や高配点の科目に重点を置いた学習配分を行うことで、効率的に得点を積み上げることが可能になります。
特に、行政法や民法は毎年安定して出題されており、試験全体の中でも比重が高いため、これらの科目を軸にした学習戦略を立てるべきです。
また、試験には足切りラインがあるため、自分自身の苦手分野を把握し、そこに集中して取り組む時間を設けることも学習効率を大きく左右します。
やみくもに全科目を均等に学習するのではなく、過去の出題実績に基づいて戦略的に学習することで、より短期間で合格に近づくことができます。
②民法と行政法は得点源なので重点的に学習する
行政書士試験の中でも、民法と行政法は配点が高く、得点源として最も重要な科目です。
行政法は試験全体の中で最も多くの問題が出題されるため、基礎から応用まで体系的に理解しておく必要があります。
民法も出題範囲が広く、契約や不法行為など実務で頻繁に扱う分野が中心となるため、日常的な事例に即して理解することが有効です。
これらの科目は、繰り返しの演習と条文の読み込みが得点力を高めるために大切です。
早い段階で基礎を固め、時間をかけて定着させることで、試験本番での安定した得点が期待できます。
③基礎知識は満点ではなく基準点を目指す
行政書士試験に合格するためには、すべての科目で満点を取る必要はありません。
各科目には最低限クリアすべき基準点が設けられており、これを満たすことが合格の絶対条件となります。
そのため、学習の際には完璧を目指すのではなく、効率的に基準点を確保することを第一目標とするのが賢明です。
苦手科目にこだわって時間をかけすぎるよりも、得意科目や配点の高い分野で確実に得点することのほうが、合格の可能性を高めます。
満点主義を捨て、合格点を確保するための現実的な戦略に切り替えることが、無理なく合格を目指すコツです。
④記述問題は訓練で構成力や表現力を高める
記述式問題は、行政書士試験の中でも差がつきやすいパートです。
記述式では法律の知識だけでなく、40字前後で的確に要点をまとめる構成力と表現力が問われます。
これは一朝一夕で身につくものではなく、繰り返しの演習と添削を通じたフィードバックが必要です。
過去問や予想問題を活用して、自分の解答と模範解答を比較し、どこが不足しているのかを明確にすることが重要です。
また、法律用語を正確に使いこなしながら、簡潔に論点をまとめる訓練を継続的に行うことで、記述式に強くなれます。
記述対策をおろそかにせず、実践を通じて表現力を磨いていくことが、得点力アップにつながります。
⑤模試と過去問で弱点を潰していく
行政書士試験の対策において、模試と過去問の活用は極めて重要です。
過去問を繰り返し解くことで、出題傾向や問われやすい論点を把握することができ、自分の理解度を測る指標にもなります。
模試は本番に近い形式で出題されるため、試験当日の時間配分や集中力を養うトレーニングとしても有効です。
また、模試や過去問を解いた後には、必ず自己分析を行い、間違えた箇所や理解が曖昧な部分を重点的に復習しましょう。
模試や過去問を繰り返すことで、自分の弱点を確実に克服し、合格に必要な実力を身につけることができます。
行政書士が向いている人と挫折しやすい人の違い
行政書士が向いている人、挫折しやすい人には以下の特徴があります。
| 向いている人 | 挫折しやすい人 | |
|---|---|---|
| 特徴 | ・コツコツと継続的に学習できる人 ・情報収集が得意な人 ・社会の制度や法律に関心がある人 | ・感覚的に物事を捉える傾向が強い人 ・計画的に物事を進めるのが苦手な人 ・長時間の集中力を保つのが難しい人 |
自分の性格や価値観、将来の働き方に照らし合わせて、行政書士という資格と職業が本当に自分に適しているのかを見極めることが大切です。
また、行政書士の仕事は、法的な知識を駆使して書類作成や官公庁への申請をサポートするもので、非常に専門性の高い職業です。
そのため、論理的思考力や地道な作業をいとわない姿勢が求められます。
本気で合格したい人は独学よりも通信講座がおすすめ
行政書士試験に本気で合格したいと考えるのであれば、独学よりも通信講座を活用することをおすすめします。
通信講座では、出題傾向を踏まえた効率的なカリキュラムと、専門講師による丁寧な解説が用意されており、初心者でも安心して学習を進めることができます。
独学では教材選びや学習方法に迷ったり、進捗の管理がうまくいかなかったりするリスクがあります。
しかし、通信講座なら学習スケジュールの提案や質問対応のサポートが受けられるため、学習効率が格段に高まります。
また、添削指導や模試の実施もあるため、理解度のチェックや記述対策にも対応可能です。
多少の費用はかかりますが、それに見合うだけの価値と安心感が得られる選択肢です。
以下の記事では、行政書士の通信講座の料金やカリキュラムについて比較解説しています。「どこの講座を選べばいいかわからない」という方は、ぜひあわせてご覧ください。

まとめ
行政書士試験は「誰でも受かる」と言われることもありますが、現実にはしっかりとした学習と戦略が求められる試験です。
試験の合格率や出題範囲を正しく理解し、自分に合った学習方法を見つけることが、合格への第一歩となります。
自身の状況に合わせた学習計画を立て、目標達成に向けて着実に前進していきましょう。

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