「行政書士試験って独学でも合格できるの？」
「予備校に通わなくても本当に大丈夫？」
「独学に向いている人や注意点を知りたい！」
こうした不安や疑問を抱えている方も多いのではないでしょうか。
行政書士試験は、法律の基礎知識が求められる国家資格ですが、出題傾向がある程度安定しており、計画的な学習をすれば独学でも十分に合格を目指せる試験です。
ただし、効率よく勉強するには、自分の学習スタイルや理解力を客観的に把握し、適切な教材とスケジュール管理が欠かせません。
この記事では、行政書士試験の合格基準を踏まえながら、独学で合格が可能な理由や、独学に向いている人の特徴、独学で学習する際の注意点について詳しく解説します。
これから行政書士を目指す方や、学習方法に悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
行政書士試験に独学で十分？可能だが遠回りになりやすい
行政書士試験は独学でも合格は可能です。しかし、効率的な学習戦略が求められるため、誰にでも向いているとは限りません。
独学の最大のメリットは費用を抑えられる点であり、 教材費や受験料のみで済みます。
もちろん、市販の教材は充実していますが、疑問点を自己解決しなければならず、学習の方向性を誤ると非効率になりがちです。
また、モチベーションの維持も一人では難しく、結果的に独学に挫折して予備校に頼る受験生も少なくありません。
独学なら合格までに2〜3年可能性がある
行政書士試験に独学で合格する場合、一般的に2〜3年程度の期間が必要となる可能性があります。
特に、法律の知識が全くない初学者の場合、まず法律の基礎を理解することから始めなければならないためです。
法律用語や概念に慣れるまでに時間がかかるうえ、条文の解釈や判例の知識を習得するには、相応の学習時間が必要となります。
また、独学は疑問点をすぐに解消できる環境にないため、理解が不十分なまま学習を進めてしまうこともあります。
その結果、知識の定着が遅れ、合格までに時間がかかってしまう可能性が高いです。
もちろん、個人の学習能力や学習時間によって必要な期間は異なりますが、独学で合格を目指す場合は、長期的な計画を立て、根気強く学習に取り組む覚悟が必要です。
司法書士、宅建士、公務員の試験に合格したことがある人なら独学で十分
法律系の試験（司法書士、宅建士、公務員試験など）に合格した経験がある人は、独学でも行政書士試験に合格できる可能性が高いと言えます。
過去の試験で法律の基礎知識や学習方法を身につけているため、行政書士試験の学習にもスムーズに入りやすいからです。
また、過去に受けた法律系の資格試験の勉強で、条文の読解力や判例の理解力、論理的思考力などを養うのに役立ちます。
ただし、法律系の試験に合格した経験がある人でも、行政書士試験特有の論点や出題形式に慣れておく必要があります。
過去問を繰り返し解き、出題傾向を把握することでより合格に近づけるでしょう。
行政書士試験の難易度は？独学で合格したい人が押さえるべきこと
行政書士試験は、法律系の国家資格の中では比較的受験しやすい部類に入ると言われています。
しかし、合格率は約10％〜13％と難関試験のひとつです。
特に、法律の知識が全くない初学者が独学で合格を目指す場合は、試験の難易度をしっかりと理解し、適切な対策を講じる必要があります。
合格率や合格基準などを総合的に考慮し、自分自身の学習状況や目標に合わせて、最適な学習計画を立てることが独学合格には大切です。
行政書士試験の合格率は例年10％〜13％
過去の行政書士試験の合格率は次のとおりです。
| 合格率 | 受験者数 | 合格者数 | |
|---|---|---|---|
| 令和6年度 | 12.90% | 47,785名 | 6,165名 |
| 令和5年度 | 13.98% | 46,991名 | 6,571名 |
| 令和4年度 | 12.13% | 47,850名 | 5,802名 |
| 令和3年度 | 11.18% | 47,870名 | 5,353名 |
| 令和2年度 | 10.72% | 41,681名 | 4,470名 |
| 令和元年度 | 11.48% | 39,821名 | 4,571名 |
| 平成30年度 | 12.70% | 39,105名 | 4,968名 |
| 平成29年度 | 15.72% | 40,449名 | 6,360名 |
| 平成28年度 | 9.95% | 41,053名 | 4,084名 |
| 平成27年度 | 13.12% | 44,366名 | 5,820名 |
参照：最近10年間における行政書士試験結果の推移｜一般財団法人 行政書士試験研究センター
例年10％〜13％程度で推移しており、その他の国家資格と比較すると決して簡単とは言えません。
しかし、司法試験や弁理士試験などの難関資格の合格率と比べると特別高い合格率ではありません。
さらに、行政書士試験には受験資格がなく、幅広い層の人が受験できるます。法律の知識が全くない初学者も多く含まれるため、難易度の割に合格率が低くなっていると考えられます。
つまり、合格率が低いからといって過度に悲観する必要はありません。
適切な学習方法でしっかりと対策を講じれば十分に合格可能です。
重要なのは、合格率という数字に惑わされず、自分自身の学習状況を客観的に評価し、着実に学習を進めていくことです。
合格基準の足切りラインに注意する
行政書士試験には、足切りライン（合格基準点）が設定されている点に注意が必要です。具体的な合格基準は次のとおりです。
- 法令科目で5割以上得点する（122点/244点を得点）
- 基礎知識科目で約4割以上得点する（24点/56点を得点）
- 試験全体で6割以上得点する（180点/300点を得点）
試験全体で6割以上（180点以上）を得点するのが前提です。
しかし、法令科目で5割以上、基礎知識科目で約4割以上の足切りラインがあり、これらを満たしていなければ仮に試験全体で6割以上得点していたとしても不合格です。
そのため、苦手科目を作らず、特定の科目に偏った学習をせずに、バランス良く学習を進める必要があります。
苦手な科目がある場合は早めに克服するように努めましょう。
足切りラインを意識しながら学習することで、苦手科目を放置することなく、総合的な実力を底上げすることができるでしょう。
合格率や合格基準について詳しく知りたい方は、ぜひ以下の記事もご覧ください。
初学者が合格に必要な勉強時間は500〜1,000時間が目安
行政書士試験に初学者が合格するために必要な勉強時間は、一般的に500時間〜1,000時間程度と言われています。
もちろん、個人の学習能力やバックグラウンドによって必要な時間は異なりますが、一つの目安として捉えておくと良いでしょう。
法律の知識が全くない初学者の場合、まずは法律の基礎を理解することから始める必要があるため、より多くの時間が必要となります。
試験直前には過去問を繰り返し解き、出題傾向を把握することも重要なので、十分な時間を確保し、計画的に学習を進めていく必要があります。
スキマ時間を活用したり、効率的な学習方法を取り入れたりして効率的に勉強を進めましょう。
勉強時間について詳しく知りたい方は、ぜひ以下の記事もご覧ください。
行政書士試験を独学で勉強するメリット
行政書士試験を独学で勉強するメリットは主に次の3つです。
- 費用を抑えられる
- 自分で学習する力が身につく
- 自分のペースで学習を進められる
通信講座や予備校に通う場合、数十万円の費用がかかることもありますが、独学であれば教材費だけで済むため、大幅に費用を節約できます。
また、自分で学習する力が身につくのもメリットです。
独学の場合、教材選びから学習計画の立案、疑問点の解決まで全て自分で行う必要があります。この過程で、自主的に学習を進める力や問題を解決する能力が養われます。
そのほか、自分のペースで学習を進められるというメリットもあります。
通信講座や予備校の場合、カリキュラムやスケジュールが決まっているため、そのスケジュールに沿って学習を進めるのが一般的です。
しかし、独学であれば、自分の都合に合わせて自由に学習時間を調整することができます。
行政書士試験を独学で勉強するデメリット
行政書士試験を独学で勉強するデメリットには次の3つがあります。
- 教材選びや情報収集に時間がかかる
- モチベーションを維持しづらい
- わからないことは自分で解決するしかない
独学は教材選びや情報収集に時間がかかりやすいです。
市販の教材は多種多様で、自分に合ったものを見つけるまでに試行錯誤が必要です。
さらに、法改正の情報や出題傾向の変化などを自ら調べて対応する必要があり、手間と時間がかかります。
また、モチベーションの維持が難しい点もデメリットで、独学は孤独になりやすく、継続的な学習が困難になる場合があります。
そのほか、わからない部分をすぐに質問できない点も独学のデメリットです。
通信講座や予備校であれば講師からのフィードバックが得られますが、独学では自力で調べる必要があり、学習の効率が落ちる可能性もあります。
行政書士試験の学習を独学で始める際は、そのメリット・デメリットを理解し、自分に適している選択をしましょう。
行政書士試験の独学が向いている人の特徴
行政書士試験の独学が向いている人の特徴には以下があります。
- 自学自習が習慣化されている人
- モチベーションを維持できる人
- 参考書を読んで専門用語が一通り理解できる人
- 過去に法律系の勉強をしたことがある人
- 法律関係の仕事の経験がある人
これらの特徴に当てはまる人は、独学でも必要な知識を効率よく吸収し、試験に対応できる力を養いやすい傾向があります。
ただし、当てはまらない人でも、勉強の工夫や環境づくり次第で独学での合格は可能です。
ここからは、それぞれの特徴について詳しく解説します。
特徴①自学自習が習慣化されている人
日常的に自分で学習する習慣がある人は、行政書士試験を独学で乗り切る資質があります。
試験勉強は長期戦になるため、計画を立てて粘り強く取り組める人は大きなアドバンテージになります。
独学では学習の進度も内容も全て自己管理が必要であり、サボろうと思えばいくらでも怠けられてしまう環境です。
そのため、自分で進捗を確認し、必要に応じてスケジュールを修正しながら学習を続けられる人に向いています。
また、自学自習に慣れている人は、教材選びや情報収集にも慣れており効率的な学習が可能です。
行政書士試験は範囲が広いため、戦略的に学習を進められる人ほど合格に近づけます。
特徴②モチベーションを維持できる人
行政書士試験の独学では、モチベーションをいかに維持するかが成功の秘訣です。
独学は孤独との戦いであり、周囲の支援や競争環境が乏しいため、途中で挫折しやすいのが現実です。
そのため、自分で目標を設定し、達成感を得ながら勉強を続けられる人に向いています。
例えば、「1ヶ月で民法の基本書を読み終える」「週に5日、1日2時間以上勉強する」など、短期的な目標を積み重ねるとよいでしょう。
また、SNSで学習仲間を見つけて交流したり、資格取得後の未来を具体的にイメージしたりすることも、モチベーション維持に効果的です。
自分なりの工夫でモチベーションを保てる人は、独学の環境でも成功しやすいです。
特徴③参考書を読んで専門用語が一通り理解できる人
行政書士試験では、条文や判例など法律的な文書を正確に読み解く力が必要です。
そのため、参考書を読んで法律用語や表現を自然に理解できる人は、独学に向いています。
法律は独特な言い回しや論理構成が多いため、初学者にとっては取っつきにくい面もあります。
しかし、これまでに法律の学習経験がある人や、専門用語に抵抗がない人であれば内容の吸収も早く、学習の効率も上がりやすいです。
仮に難解な用語に直面しても、辞書やネットを活用して自分で調べる力があることも独学には求められます。
理解力に不安がある場合は、辞典や用語集を併用して用語を習得していくことも大切です。
特徴④過去に法律系の勉強をしたことがある人
過去に法律系の資格試験や大学での法学履修経験がある人は、行政書士試験の独学に非常に有利です。
既に法律の基礎用語や条文の読み方、論理構成の理解に慣れているため、ゼロから学ぶ初学者に比べてスタートダッシュがしやすい傾向があります。
例えば、法学部出身者や宅建・社労士など法律系資格の勉強をしたことがある人は、知識の応用や科目間の関連性を把握しやすく、学習の効率も高まります。
ただし、「他資格で学んだから」という油断は禁物であり、行政書士試験特有の出題傾向や形式には個別に対応する必要があります。
特徴⑤法律関係の仕事の経験がある人
法律関係の実務経験がある人は、行政書士試験の独学に大きなアドバンテージを持っています。
例えば、企業の法務部や法律事務所で働いた経験がある人は、条文の解釈や契約書の作成、行政手続きに触れてきたことで、法律の考え方や実務的な運用に馴染みがあるはずです。
実務経験は、試験勉強において抽象的な知識を具体的なイメージとして理解する助けになります。
また、法律文書に慣れている人は、初学者よりも読解力も向上しているため、参考書や条文を読む際のストレスも少ないでしょう。
とはいえ、実務と試験では求められる知識や形式が異なる点もあるため、試験対策としての勉強を怠らないよう注意が必要です。
行政書士試験の非効率な勉強法とは？独学するときの注意点
行政書士試験の勉強を独学するときの注意点は次の4つです。
- インプットばかりでアウトプットしない
- 学習範囲を絞り込まずに網羅的に勉強する
- スケジュールを決めずにとりあえず勉強を始める
- インターネットでほとんど調べない
行政書士試験において、非効率な勉強法を続けると、合格までに無駄な時間と労力を要してしまいます。
独学では学習のすべてを自己管理する必要があるため、間違った方法を見直す機会が少なく、軌道修正が遅れるリスクがあるためです。
ここからは、それぞれの注意点について詳しく解説します。
注意点①インプットばかりでアウトプットしない
行政書士試験では、知識をインプットするだけでなく、それを活用して問題を解くアウトプットの練習が欠かせません。
参考書を読み続けるだけでは理解が浅くなり、実際の試験で得点に結びつきにくくなります。
特に、択一式や記述式の問題に対応するには、知識を正確に使いこなすトレーニングが必要です。
アウトプットの練習法としては、過去問や予想問題集を利用するのがおすすめです。繰り返し解くことで、出題パターンへの慣れと知識の定着が進みます。
また、間違えた問題はそのままにせず、必ず復習して原因を明確にすることが重要です。
注意点②学習範囲を絞り込まずに網羅的に勉強する
行政書士試験の出題範囲は非常に広いため、全てを網羅的に学ぼうとすると時間がいくらあっても足りません。
重要なのは、出題頻度の高い分野や配点比率の高い科目に的を絞って学習することです。
例えば、行政法と民法は全体の6割以上の配点を占めており、ここで得点を確保することがポイントです。
一方で、基礎法学や商法・会社法などの出題数が少ない分野は、深入りしすぎると非効率になります。
まずは過去問を分析し、どの分野にどれだけ時間をかけるべきか優先順位を明確にしましょう。
注意点③スケジュールを決めずにとりあえず勉強を始める
行政書士試験の勉強を計画なしで始めると、学習の方向性が定まらず、時間だけが無駄に過ぎてしまいます。
独学では進捗を管理してくれる存在がいないため、自分でしっかりとスケジュールを立てることが極めて重要です。
まずは試験日から逆算して、いつまでに何を終えるべきかを明確にします。
例えば、「3ヶ月で主要科目のインプットを終える」「毎週末は過去問演習に充てる」など、目標と期限を設定しましょう。
また、予備日を設けることで、突発的な予定や体調不良にも柔軟に対応できます。
注意点④インターネットでほとんど調べない
行政書士試験の独学では、わからないことが出てきたときにインターネットを活用する姿勢が欠かせません。
参考書だけでは説明が不足している場合もあり、そのままにすると理解が曖昧になってしまいます。
ただし、ネットの情報には誤解も混じっていることもあり、信頼できる情報源を見極める必要があります。
行政書士会の公式サイトや資格スクールが運営する解説サイト、実務経験者のブログなどは比較的信頼性が高いです。
また、法令データ提供システムなどの公的情報源も有効です。
ネットを使わずに独学を進めるのは非効率な方法なので、自分の疑問点を即座に解消できるスキルも身につけましょう。
行政書士試験の最短合格を目指すならやっぱり通信講座がおすすめ
独学での合格は可能とはいえ、最短合格を目指すなら通信講座の利用が有効です。
通信講座では、合格に十分な教材が提供されているほか、過去問分析をもとにした効率的なカリキュラムが組まれており、何をいつ勉強すればいいのか明確になります。
さらに、経験豊富な講師による解説で、独学では理解が難しい論点もクリアに把握できるのが魅力です。
また、質問サポートや添削指導を通じて、アウトプットの質を高めることができます。モチベーション維持の面でも、通信講座は一定のリズムを作りやすく、継続的な学習に役立ちます。
時間や労力を最小限に抑えながら合格を目指したい方は、通信講座を利用しましょう。
以下の記事では、通信講座の料金やカリキュラムについて解説しているので、「どの講座がいいかわからない」「コスパのいい講座が知りたい」という方は、ぜひあわせてご覧ください。
まとめ
行政書士試験は、独学でも十分に合格が可能な試験です。ただし、独学はすべてを自力で管理しなければならないため、計画性・継続力・情報収集力が問われます。
自分に合った教材選びや効率的な学習計画の策定が合格に近づく秘訣です。
独学には費用面や自由度といったメリットがある一方で、モチベーションの維持や疑問点の解消といった課題もあります。
そのため、自分の学習スタイルや生活状況を見極めたうえで、独学が適しているかどうかを慎重に判断しましょう。
もし独学に不安がある場合は、通信講座など外部サービスの活用もぜひ検討してください。