「行政書士の資格に将来性は本当にないの?」
「今後も需要があるのか気になる…」
「AIの進化で行政書士の仕事はどうなるの?」
このような疑問を抱えている方も多いのではないでしょうか。
行政書士は、官公署への申請手続きや各種契約書の作成などを行う法律系国家資格です。
一部では「将来性がない」と言われることもありますが、実際には企業のコンプライアンス意識の高まりや高齢化による相続・遺言ニーズの増加などにより、近年その需要は拡大しています。
また、AIやITの発展により業務の一部は効率化されつつも、法律解釈や対人対応といった人の判断が必要な業務は今後も行政書士の役割が不可欠とされています。
この記事では、行政書士資格の将来性が懸念される背景と、将来性が高いといえる理由、さらにAIとの関係性について詳しく解説します。これから行政書士を目指す方やキャリアに不安を感じている方は、ぜひ最後までご覧ください。
行政書士の将来性が高いと言える5つの理由
行政書士の将来性が高いと言える理由には、次の5つがあります。
- 外国人雇用や民泊など業務範囲が拡大している
- 少子高齢化に伴い、相続や遺言などの需要が増加している
- 独占業務が多い
- AIに代替されにくい業務が多い
- コンサルティング業務へ発展させられる
それぞれ詳しく解説します。
理由①外国人雇用や民泊など業務範囲が拡大している
近年のグローバル化や多様なビジネスモデルの登場により、行政書士の業務範囲は着実に拡大しています。
外国人雇用に関しては、在留資格の申請や変更、就労ビザの取得など、専門的な知識と手続きが求められます。
行政書士はこれらの手続きを代行し、企業がスムーズに外国人を雇用できるようサポートする仕事です。
そのほか、民泊事業においては、旅館業法の許可申請や民泊運営に関する各種申請手続きなど、法規制を遵守するための支援が不可欠です。
このように、時代の変化とともに行政書士の業務範囲も変化しており、今後も行政書士の活躍の場を広がることが予想されます。
理由②少子高齢化に伴い、相続や遺言などの需要が増加している
日本社会は少子高齢化という深刻な課題に直面しており、それに伴い、相続や遺言に関するニーズが急速に高まっています。
相続手続きは、複雑な法律や税務の知識が必要となるため専門家のサポートが不可欠です。
例えば、遺産分割協議書の作成、相続人調査、相続財産評価など、相続に関する様々な手続きを代行し、遺族の負担を軽減するのが行政書士の役割です。
また、遺言書の作成支援も重要な業務のひとつで、財産をどのように分配するかを定める重要な書類であり、行政書士は、法律に則って適切な遺言書の作成をサポートする必要があります。
理由③独占業務が多い
行政書士は独占業務が多いのも、将来性が高いと言える理由のひとつです。
行政書士が独占業務として作成できる書類は以下です。
- 官公署に提出する書類
- 権利義務に関する書類
- 事実証明に関する書類
独占業務は高度な法律知識と実務経験が必要な業務であり、行政書士のみが行うことができるものとして、法律によって定められています。
そのため、国民の生活や企業活動を円滑に進める上で欠かせない存在として、行政書士は重要な役割を担っているのです。
当サイトの以下記事では、行政書士の独占業務について詳しく解説しているのでぜひあわせてご覧ください。

理由④AIに代替されにくい業務が多い
近年、AI技術の進歩により、さまざまな職業がAIに代替される可能性が指摘されています。しかし、行政書士の業務にはAIに代替されにくい分野も少なくありません。
行政書士の業務は単なる書類作成だけでなく、顧客とのコミュニケーションを通じて、個々の状況やニーズを把握し、最適な解決策を提案することが求められます。
特に、スムーズに許認可を得るために、顧客や行政機関との打ち合わせを通して調整を行うことも多いです。
これらの業務は、AIには代替できない人間ならではの能力が求められるため、行政書士の将来性は明るいと言えるでしょう。
理由⑤コンサルティング業務へ発展させられる
行政書士の業務は書類作成代行に留まらず、コンサルティング業務へと発展させられる可能性があるのも、将来性が高い理由のひとつです。
法務コンサルタントとして企業や個人の抱える法律問題を分析し、最適な解決策を提案することでより高度なニーズに応えることができます。
例えば、企業法務においては契約書の作成や審査、法律顧問としての役割を担うことで、企業のコンプライアンス体制強化に貢献できます。
また、個人向けには相続対策や事業承継など、将来を見据えたコンサルティングを提供することで、顧客の安心と満足を得ることができます。
これらのコンサルティング業務は、行政書士の専門知識と経験を活かし、顧客との信頼関係を構築することで長期的なビジネスチャンスにつながります。
行政書士におけるAIやデジタル化の影響は?
昨今のAIの進歩やデジタル化に伴い、行政書士の業務においても以下の影響があると考えられます。
- 書類作成の自動化や行政書士の役割は変化する
- AI時代でも行政書士の一部業務は将来性が保たれる
- IT×法務スキルのかけ合わせで人材価値が上がる
それぞれ詳しく解説します。
影響①書類作成の自動化や行政書士の役割は変化する
AI技術の進化は、行政書士の業務の中でも特に書類作成の分野に大きな影響を与えると予想されます。
AIを活用した書類作成ツールは、定型的な書類を自動的に作成することが可能となり、行政書士の業務効率を大幅に向上させることが可能です。
さらに、デジタル化の進展により、オンライン申請の普及や電子署名の活用など、行政手続きの簡素化を促進し、行政書士の業務スタイルにも変化をもたらしています。
しかし、一方で、AIによる書類作成の自動化が進むことで、行政書士は書類作成代行よりも高度な専門知識や判断力を必要とするコンサルティング業務における比率が高くなることが予想されます。
そのため、AI技術を積極的に活用しつつ、自身の専門性を高めて変化する社会に対応していくことが将来的に求められます。
影響②AI時代でも行政書士の一部業務は将来性が保たれる
AI技術の進化で、行政書士の将来性がなくなっているのではと不安になっている方も多いかと思います。
しかし、AI技術が進化しても、行政書士のすべての業務が代替されるわけではありません。
例えば、顧客へのアドバイスや行政機関との交渉など、AIには代替できない業務が特に重要となっていくことが予想されます。
顧客との対話によって個別の状況を正確に把握し、最適な解決策を導き出す業務や複雑な法的判断を伴う案件への対応は、依然として人間の知識と経験が不可欠です。
行政機関との交渉や折衝など人間的なコミュニケーション力が求められる場面でも、行政書士の役割は残ります。
また、書類の作成をAI技術で自動化させたとしても、その書類のチェックや修正も人間が行わなければなりません。
影響③IT×法務スキルのかけ合わせで人材価値が上がる
行政書士は、IT技術と法務スキルのかけ合わせで人材価値を上げることが可能です。
IT技術が進歩している近年においても、デジタル化にうまく対応できていない行政書士は少なくありません。
例えば、オンライン申請や電子契約、リモート相談といった新しいサービス形態への対応が不可欠となるなか、ITリテラシーを持つ行政書士は差別化を図ることが可能です。
AIによる契約書のドラフト作成やチャットボットによる初期相談対応などの導入にも力を入れれば、顧客満足度の向上とコスト削減の両立の実現につながります。
行政書士は将来性がない?将来性を危ぶまれる理由
行政書士の将来性がないと言われる理由には大きく次の3つが考えられます。
- 行政書士の登録者数増加による競争が激化している
- 開業行政書士の廃業率の高さとその背景
- 行政書士の就職先が少ない
それぞれ詳しく解説します。
理由①行政書士の登録者数増加による競争が激化している
近年、行政書士の数は年々増加しており、競争が激化していると言われています。
実際、2025年4月の段階で行政書士の個人会員数は52,734人となっています。
参照:各都道府県の行政書士会所在地・会員数等|日本行政書士会連合会
行政書士試験に合格し行政書士になれたとしても、顧客が獲得できずに意味がないと思う方もいるかもしれませんが、競争の激化は業務品質の向上を促す側面もあります。
専門性を高めるほか、業務効率化させたり顧客対応力の向上に力を入れたりすることで、競争で生き抜くことが十分可能です。
どの業界においても、独立開業すれば競争が行われるため、行政書士も市場環境に応じて柔軟に戦略を立てていく必要があると言えます。

理由②開業行政書士の廃業率の高さとその背景
行政書士は開業後の廃業率が高いと言われています。しかし、実際の廃業率はそれほど高くありません。
令和5年度(2023年度)における行政書士の登録状況は以下のとおりです。
| 登録者数 | 51,041人 |
|---|---|
| 廃業者数(登録抹消者数) | 2,368人 |
| 廃業率 | 4.6% |
令和5年度の登録者数は51,041人で、そのうち2,368人が年内に廃業しているため、廃業率は4.6%ということがわかります。
これらの廃業者のなかには、病気や死亡などを理由に廃業している行政書士も含まれており、廃業届を提出して廃業している行政書士の割合はさらに低いことが予想されます。
また、令和5年度の行政書士の新規登録者数は2,946人です。
令和5年度に2,368人が廃業しているため、新規登録者の2,946人のうち2,368人が廃業したとなれば、廃業率80%になりますが、廃業者全員が新規登録者というわけではありません。
これが、「行政書士は廃業率が高い」と言われるカラクリです。実際には行政書士として事業を営み続けている人は多いです。
理由③行政書士の就職先が少ない
行政書士資格を取得しても就職先は限定されており、主に行政書士事務所や企業の法務部門が中心です。
就職先が少ないから行政書士は意味がないと思われがちですが、実際は行政書士は独立開業を前提とした資格のため、そもそも就職先は多くありません。
行政書士は初期費用が少なく、店舗も構える必要もないため、独立のハードルが低いことが特徴です。
また、行政書士には副業という選択肢もあり、一般企業で働きながら、副業として行政書士の業務を行う人も少なくありません。
このことから、行政書士の資格において就職先の少なさは問題ではないと言えるでしょう。


行政書士資格を取得した後の主なキャリア
行政書士資格を取得した後のキャリアには、主に以下があります。
- 法務事務所
- 弁護士事務所
- 一般企業
- 独立開業
法務事務所は、使用人行政書士として登録し、実務経験を積みながら所長の営業や経営手法も学べるため、将来的な独立開業の準備にも適しています。
ただし、事務所の方針に従う必要があり、業務内容は事前によく確認すべきです。
弁護士事務所では、行政書士業務よりもパラリーガルとして弁護士の補助業務を担うケースが一般的ですが、入管手続きなど一部で行政書士としての知識を発揮できる場もあります。
さらに、一般企業では建設や運送、不動産業界などで許認可申請や契約書作成などの業務に関わることが可能です。
法務部門での配属となれば、法改正への対応や法律相談など幅広く活躍できるでしょう。ただし希望通りの部署に入れるとは限らず、慎重な企業選びが求められます。
また、行政書士は独立開業しやすい資格なので、資格取得後に一定の経験を積んだ後に独立開業する人も多いです。
今後も行政書士として将来性を高めるための戦略
今後も行政書士として将来性を高めるための戦略として次の3つがあります。
- ダブルライセンスを取得して差別化する
- 特定行政書士になる
- 専門分野に特化する
それぞれ詳しく解説します。
ポイント①ダブルライセンスを取得して差別化する
行政書士として他の行政書士との差別化を図るためには、ダブルライセンスの取得が効果的です。
例えば、社労士(社会保険労務士)の資格を取得すれば、人事労務の専門知識が身につき、企業向けのコンサルティング業務の幅が広がります。
宅建士(宅地建物取引士)の資格を取得すれば、不動産関連の手続きや取引に強みを持つことができます。
このように、ダブルライセンスにより提供できるサービスの種類が増え、顧客からの信頼や満足度向上にもつながるのが特徴です。
行政書士の資格を取得している人は多くても、ダブルライセンスを取得している人は少ないため、人材価値を高めることができます。
また、宅建士や司法書士などの国家資格であれば、法学一般の素養は共通しているため、初学者よりも資格取得のハードルが低いというメリットもあります。

ポイント②特定行政書士になる
特定行政書士になるのも、行政書士としての将来性を高める戦略のひとつです。
特定行政書士は、行政不服申立ての手続きを顧客に代わって行う権限が付与される特別な行政書士資格です。
行政庁の決定に不服がある場合に、顧客の権利擁護のための法的手続きを代理できるため、高度な専門性と実務能力が求められます。
特定行政書士になるためには、行政書士登録後、特定研修の受講と考査に合格する必要があります。
特定行政書士は通常の行政書士よりも広い業務領域が確保できるほか、特定行政書士は希少性が高いため、差別化の手段としても非常に有効です。
ポイント③専門分野に特化する
行政書士として将来性を高めるために、専門分野に特化するという方法もあります。
行政書士は業務範囲が広いため、すべての分野をカバーするのは現実的ではありません。自身の得意分野や関心の高い分野に特化することで、専門性を高めることが効果的です。
行政書士の専門性が求められる領域には、外国人の在留資格申請やビザ関連手続き、建設業許可申請、会社設立手続き、相続や遺言書作成支援などがあります。
特定分野で実績やノウハウを積み重ねることで、顧客からの信頼を得やすくなり、紹介やリピートにつながるケースも多くなります。
行政書士、司法書士、社労士、宅建士の将来性を比較
行政書士の比較対象として、よく司法書士、社労士、宅建士が挙げられます。しかし、どの資格が最も将来性があるのかという結論を出すことはできません。
いずれも将来性の高い資格であり、キャリア形成の方法には資格によって異なるうえ、個人差があるためです。
行政書士は在留資格申請や建設業界に強みをもつことで将来性を高められると同様に、社労士や司法書士なども、戦略によって将来性を高めることが十分可能です。
そのため、将来性だけで資格を決めるのではなく、自分の興味のある分野やキャリアプラン考慮して、資格を選択することが大切と言えます。

行政書士の資格は何歳からでも将来性がある?
行政書士の資格は、何歳から取得しても将来性が期待できます。
行政書士の資格試験には年齢制限がなく、誰でも受験することが可能です。実際、合格者は10代〜60歳以上と幅広く、なかには80歳を超えて資格を取得している人もいます。
令和6年度の試験合格者の年齢は以下のとおりです。
- 10歳代以下:76人
- 20歳代:1,293人
- 30歳代:1,595人
- 40歳代:1,564人
- 50歳代:1,175人
- 60歳以上:462人
行政書士において年齢や社会経験はむしろ強みとなり、特に高齢者の相続や遺言書作成の相談では、人生経験豊富な行政書士のアドバイスが信頼されやすくなります。
また、企業法務においてもビジネス経験を活かして経営者の視点から助言できる点は大きなメリットです。
そのため、行政書士は何歳からでも将来性のある資格と言えます。
行政書士の最短合格を目指すなら通信講座を活用する
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最短合格を目指すうえで、費用対効果の面でも非常に優れた選択肢といえるでしょう。効率良く、確実に行政書士試験に合格したいと考えている方は、ぜひ通信講座の利用を検討してみてください。
以下の記事では、行政書士の通信講座の料金やカリキュラムについて、比較解説しているのでぜひあわせてご覧ください。

まとめ
行政書士の将来性は、社会の変化やAIの発展によって形を変えながらも、専門知識と実務経験に裏打ちされた価値により引き続き高いといえます。
変化する市場環境に適応するためには、自己研鑽を怠らず、ダブルライセンスの取得や特定行政書士資格への挑戦、専門分野への特化など、個々の戦略的な行動が不可欠です。
さらに、ITやAIを積極的に活用することで業務効率化や顧客満足度を高めることができます。

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