「裁判官になるには何年くらいかかるの?」
「最短で目指すにはどんなルートがある?」
「そもそも裁判官ってどんな仕事をするの?」
こうした疑問を抱えている方も多いのではないでしょうか。
裁判官は、司法試験を突破した法律の専門家の中でも、特に公正な判断力と高度な知識が求められる職業です。
理論上、条件を満たせば、最短4〜6年程度で裁判官になることも可能です。
この記事では、裁判官になるまでに必要な年数やルート、具体的な流れを詳しく解説します。また、裁判官の仕事内容や求められる資質についても紹介しますので、法曹を目指す方はぜひ最後までご覧ください。
裁判官になるには何年かかる?最短4〜6年!裁判官になるまでの流れを解説
裁判官への道は、法曹資格を得るための司法試験合格が前提となります。
そこからさらに司法修習を経て、裁判官としての採用選考に進むという複数の段階を踏む必要があります。主な流れは次のとおりです。
- 司法試験の受験資格を獲得する(2〜3年)
- 司法試験に合格する(1〜2年)
- 司法修習を経て二回試験に合格する(1年)
- 裁判官(判事補)として任官される
裁判官になるにはストレート合格で早くて4〜6年かかる計算ですが、実際には複数回受験するなど、任官に7年以上かかることも多いです。
ここからは、判事補になる(任官する)までを裁判官になると定義し、裁判官になるまでの流れと最短年数を解説します。
STEP1.司法試験の受験資格を獲得する(2〜3年)
裁判官になるための最初の大きな関門は、司法試験の受験資格を得ることです。
司法試験の受験資格を得るためには、「法科大学院を修了するルート」と「予備試験に合格するルート」の2つのルートが存在します。
法科大学院を修了するルートは、法科大学院に入学し、法学既修者なら2年間、未修者なら3年間の課程を終える必要があります。
また、予備試験に合格するルートは、学歴に関わらず司法試験の受験資格を得る道です。
予備試験は非常に難易度が高いため、2〜3年の学習期間は必要であるものの、合格すれば法科大学院を修了せずとも司法試験の受験資格が得られます。
そのため、どちらのルートを選択するにしても、一般的には受験資格獲得までに平均して3年程度の期間を見込むことが多いです。
STEP2.司法試験に合格する(1〜2年)
司法試験の受験資格を得た後、次は司法試験に合格する必要があります。
司法試験は年に一度実施され、法律家としての素養を測る非常に難易度の高い国家試験です。
法科大学院修了者や予備試験合格者であっても、司法試験に合格するためには、膨大な量の法律知識の習得と、応用能力を高めることが不可欠です。
一般的には、受験資格を獲得後、司法試験合格までに約1〜2年間の専念した学習期間が求められます。
STEP3.司法修習を経て二回試験に合格する(1年)
司法試験に無事合格すると、次は司法修習生として1年間の研修期間が必要です。
司法修習は、裁判官、検察官、弁護士といった法曹三者いずれの道に進むにも必須の課程であり、期間は1年間です。
司法修習では、実務修習と集合修習が行われ、実際の事件記録に触れたり、先輩法曹からの指導を受けたりしながら、法律実務家としての基礎を叩き込まれます。
また、修習の最後には、「二回試験」と呼ばれる司法修習生考試があり、二回試験に合格して初めて法曹資格(判事補、検事、弁護士となる資格)が正式に与えられます。
STEP4.裁判官(判事補)として任官される
司法修習を終え、二回試験に合格した者のうち、裁判官を志望し、かつ最高裁判所によって任命された者が新人の見習い裁判官(判事補)として任官できます。
判事補の任官は、一般的な筆記試験や面接試験といった「採用試験」の形式を取るものではありません。
以下の要素を考慮し、厳しい選抜が行われたうえで、最高裁判所から声がかかる仕組みです。
- 司法修習期間中の成績
- 起案(裁判の判決文の素案作成など)の評価
- 教官による人物評価
- 本人の任官への希望
- 裁判官としての適性
など
任官後の最初の10年間は判事補であり、単独で裁判を行うことができる事件の範囲に一定の制限があります。
多くの場合は、地方裁判所や家庭裁判所に配属され、民事事件や刑事事件の審理・裁判に実際に携わり、上席裁判官の指導を受けながら、実務経験を積んでいくことになります。
判事補としての期間は、将来、独立した一人の裁判官(判事)として活躍するための重要な土台を築く期間であり、法と正義への深い理解と洞察力を養うため時間です。
二回試験後に任官されなかった場合、基本的に裁判官になることはできず、弁護士や検察官になるのが一般的です。
しかし、法曹としての経験を積み、専門性や適性があると判断された場合は、非常に例外的ではありますが、中途採用のような形で裁判官に任官できる可能性はあります。
司法試験の受験資格を得るには2つのルートがある
裁判官への道の第一歩である司法試験において、受験資格を得るためには、大きく分けて以下2つのルートが存在します。
- 予備試験に合格する
- 法科大学院を修了する
どちらのルートを選択するかによって、必要な学習期間や費用、試験対策の進め方が異なってきます。
ここからは、それぞれのルートについて詳しく解説します。
ルート①予備試験に合格する
予備試験は、法科大学院を修了していない人でも司法試験の受験資格を得ることを目的とした試験です。
学歴や年齢、職歴に関わらず誰でも挑戦することができます。
予備試験の最大のメリットは、法科大学院に通う時間と費用を節約できる点であり、最短ルートで司法試験を目指せる可能性があります。
しかし、その合格率は例年4%前後と極めて低く、非常に難易度の高い試験として知られています。
そのため、予備試験に合格するためには、膨大な学習時間と質の高い対策が不可欠です。
独学での合格は困難を極めるため、予備校を利用するなどして効率的に学習するのが一般的です。
ルート②法科大学院を修了する
法科大学院(ロースクール)の課程を修了することで、司法試験の受験資格を得るルートもあります。
法科大学院には、法学部卒業者などを対象とした2年間の「既修者コース」と、法学部以外の学部卒業者や社会人などを対象とした3年間の「未修者コース」があります。
法科大学院は、少人数教育や双方向の授業を通じて、法律の基礎知識だけでなく、法的思考力や応用力を体系的に学ぶ場所です。
同じ目標を持つ仲間と共に学ぶ環境なので、モチベーション維持につながるというメリットがあります。
ただし、入学のためには入試に合格する必要があり、修了までには学費もかかるのがデメリットです。
法科大学院を修了することで司法試験の受験資格が得られますが、その後の司法試験合格に向けては、やはり個人の努力が重要となります。
裁判官ってどういう仕事?
裁判官は、私たちの社会における公正と正義の実現を担う、極めて重要な役割を持つ職業です。
憲法と法律に基づき、民事事件、刑事事件、行政事件など、あらゆる紛争や事件に対して中立かつ公平な立場で判断を下します。
法廷で当事者の主張や証拠を吟味し、法を適用して判決を下すことが主な職務ですが、それ以外にも和解の勧試や令状の発付など、その業務は多岐にわたります。
高い倫理観と専門的な法律知識、そして人間性への深い洞察が求められ、その判断一つひとつが人々の権利や人生に大きな影響を与えるため、重い責任を伴う仕事と言えるでしょう。
裁判官の仕事内容と1日の流れ
裁判官の仕事内容は、法廷での訴訟指揮や判決言い渡しが代表的ですが、それ以外にも非常に多岐にわたります。
主な業務として以下が挙げられます。
- 事件記録の読み込み
- 争点整理
- 証拠調べ
- 和解の試み
- 令状請求の発付・許可・却下の判断(刑事事件の場合)
など
裁判官の1日は、午前中に法廷が開かれることが多く、午後は判決文の作成や事件記録の検討、裁判官同士での評議などに時間を費やします。
また、最新の判例や法改正についての研究も欠かせません。
膨大な書類と向き合い、複雑な事案を正確に理解し、適切な判断を下すためには、集中力と持続力が求められる知的にハードな毎日です。
裁判官の給与体系や平均年収
裁判官の給与は、「裁判官の報酬等に関する法律」によって明確に定められており、その身分と職責の重要性から、安定した高い水準が保たれています。
給与体系は判事補、判事、高等裁判所長官、最高裁判所判事といった階級や号俸によって細かく規定されており、経験年数や役職に応じて昇給していきます。
平均年収については、役職や勤続年数によって大きく異なりますが、一般的に判事補の初任給でも比較的高く、キャリアを積むにつれて着実に増加するのが特徴です。
例えば、判事の年収は1,000万円を超えるケースが多く、最高裁判所長官にもなるとさらに高い報酬が得られるとされています。
裁判官に求められるスキル
裁判官には、高度な専門性と人間性が多角的に求められます。求められるスキルは多岐にわたりますが、代表的なスキルには以下があります。
- 膨大な法律知識
- 法的判断力
- 論理的思考力
- 真相を明らかにする分析力
- 冷静沈着に訴訟を指揮する能力
- 強い倫理観と公平性
- 人間理解
など
最も基本的なスキルは、膨大な法律知識とそれを事案に的確に適用する法的判断能力です。
加えて、複雑な事件の真相を明らかにするための論理的思考力や分析力、当事者の主張を正確に理解し、分かりやすく説明するための説明能力も不可欠です。
法廷ではいかなる先入観にも左右されず、冷静沈着に訴訟を指揮する能力、中立公正な立場で物事を判断する強い倫理観と公平性が求められます。
また、訴訟当事者の主張を丁寧に聞き取り、その心情に寄り添える人間理解も欠かせません。
裁判官に向いている人の特徴
裁判官に向いている人の特徴には以下があります。
- 強い正義感と公平性を持つ人
- 人々の権利を擁護することに使命感を覚える人
- 真実を追求する知的好奇心や探求心が強い人
- 感情に流されず、物事を公平に考えられる人
- ストレス耐性がある人
複雑な事件や人間関係を粘り強く分析し、真実を追求する知的好奇心や探求心が裁判官には必要です。
感情に流されず、客観的かつ論理的に物事を判断できる冷静さ、そして当事者双方の意見に真摯に耳を傾ける傾聴力も求められます。
さらに、膨大な量の事件記録を読み解き、判決文を作成する集中力と忍耐力、重い責任を背負いながらも精神的なバランスを保てるストレス耐性も、裁判官として長く活躍するためには欠かせない資質と言えるでしょう。
裁判官の主な就職先は?最高裁判所と下級裁判所の2つ
裁判官の主な勤務先は、大きく分けて「最高裁判所」と「下級裁判所」の2つです。
新たに裁判官として任官されると、まずは「判事補」として地方裁判所や家庭裁判所といった下級裁判所に配属されるのが一般的です。
下級裁判所には、地方裁判所、家庭裁判所、簡易裁判所、高等裁判所が含まれ、全国各地に存在します。
下級裁判所で経験を積んだ後、極めて限られた人のみが最高裁判所判事として内閣から任命されます。
最高裁判所は日本の司法機関の頂点に位置し、主に憲法判断や法令解釈の統一など、極めて重要な役割を担います。
最高裁判所の裁判官(判事)になるには、長年の実務経験と卓越した識見が求められ、非常に狭き門です。
裁判官の転職・就職状況は?定員(判事補)は例年約100人
裁判官の採用は、主に司法修習を終えた者の中から行われます。
判事補の採用人数は、その年の司法修習生の数や裁判所の欠員状況によって変動しますが、例年おおむね100人前後で推移しています。
司法試験合格者全体から見ると、裁判官になれるのはごくわずかであり、非常に競争率が高いと言えます。
任官後は、全国各地の裁判所へ転勤を繰り返しながらキャリアを積んでいくことになります。
また、裁判官は一度任官されると、定年までその職務を全うすることが一般的であり、民間企業への転職のような事例は少ないです。
裁判官から転職する場合は、大学教員や弁護士など法曹資格を活かした職に転職するケースがあります。
裁判官に将来性はある?
裁判官という職業は、社会の公平性や正義を維持するために不可欠な存在であり、その需要は今後も変わることはないでしょう。
法治国家である日本において、法律に基づいた紛争解決を行う裁判官の役割は、社会の安定と秩序の根幹を支えています。
近年、AI技術の進展により一部業務の効率化が期待されています。
しかし、最終的な判断や複雑な人間関係が絡む事案の処理、そして法廷でのコミュニケーションといった人間的な要素が求められる部分はAIでは代替できません。
そのため、将来的には裁判官の専門性や人間性がより一層重視されるようになると考えられます。
社会が存続する限り、裁判官の仕事がなくなることはなく、安定した将来性を持つ職業と言えます。
裁判官に年齢制限はある?
裁判官として任官されるにあたり、年齢制限は定められていません。
しかし、任官時の年齢が高すぎると「将来の人材育成」や「勤務年数」などの観点から実際には不利とされており、30代後半~40代以降での判事補任官はほとんど例がありません。
裁判官になるためには、司法試験や二回試験に合格するといったプロセスが必要なため、裁判官になるのは早くても20代半ば以降になるのが現実的です。
また、裁判官には定年制度が設けられているため、実質的な上限年齢は存在します。
裁判所法によれば、最高裁判所の長官及び判事は70歳、高等裁判所・地方裁判所・家庭裁判所の長官や判事、判事補、簡易裁判所の判事は65歳が定年とされています。
したがって、定年を超える年齢で新たに裁判官として採用されることはありません。
司法試験と予備試験の難易度は?
司法試験や予備試験は、国内の国家試験の中でも最難関クラスに位置付けられています。
両試験ともに、合格するためには膨大な法律知識の習得はもちろんのこと、それを具体的な事案に適用する高度な法的思考力、論理構成力、そして長文の答案を作成する文章力が求められます。
単に知識を暗記するだけでは太刀打ちできず、法律の趣旨や判例の射程を深く理解し、多角的な視点から事案を分析する能力が試されます。
司法試験と予備試験の合格率
司法試験と予備試験の合格率は、それぞれ以下のとおりです。
【予備試験の合格率】
| 年度 | 受験者数 | 最終合格者数 | 合格率 |
|---|---|---|---|
| 2024年 | 12,569人 | 449人 | 3.6% |
| 2023年 | 13,372人 | 479人 | 3.6% |
| 2022年 | 13,004人 | 472人 | 3.6% |
| 2021年 | 11,717人 | 467人 | 4.0% |
| 2020年 | 10,608人 | 442人 | 4.2% |
| 2019年 | 11,780人 | 476人 | 4.0% |
| 2018年 | 11,136人 | 433人 | 3.9% |
| 2017年 | 10,743人 | 444人 | 4.1% |
| 2016年 | 10,442人 | 405人 | 3.9% |
| 2015年 | 10,334人 | 394人 | 3.8% |
【司法試験の合格率】
| 年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
|---|---|---|---|
| 2024年 | 3,779人 | 1,592人 | 42.1% |
| 2023年 | 3,928人 | 1,781人 | 45.3% |
| 2022年 | 3,082人 | 1,403人 | 45.5% |
| 2021年 | 3,424人 | 1,421人 | 41.5% |
| 2020年 | 3,703人 | 1,450人 | 39.2% |
| 2019年 | 4,466人 | 1,502人 | 33.6% |
| 2018年 | 5,238人 | 1,525人 | 29.1% |
| 2017年 | 5,967人 | 1,543人 | 25.9% |
| 2016年 | 6,899人 | 1,583人 | 22.9% |
| 2015年 | 8,016人 | 1,850人 | 23.1% |
予備試験の最終合格率は、例年3%〜4%程度で推移しており、極めて狭き門です。
受験資格に制限がないため、多様なバックグラウンドを持つ人が挑戦しますが、合格できるのはごく一部の優秀な受験生に限られます。
一方、司法試験の合格率は近年40%前後で推移しています。
司法試験は、法科大学院修了者や予備試験合格者を対象としているため、予備試験より合格率は高いです。
司法試験や予備試験の合格までに必要な勉強時間
司法試験や予備試験の合格に必要とされる勉強時間は膨大です。
一般的に、予備試験合格のためには、法律知識ゼロの状態から始めて5,000時間〜8000時間、あるいはそれ以上の学習時間が必要と言われています。
1日に8時間勉強しても1年以上かかる計算です。
法科大学院ルートの場合も同様に、法科大学院での2年間または3年間の学習が必要になります。
また、司法試験の受験資格を得た後も、司法試験対策として、さらに2,000時間〜3,000時間程度の集中学習が必要とされることが多いです。
ただし、これらの時間はあくまで目安であり、個人の学習効率や開始時点での知識レベルによって大きく変動します。
最短で司法試験を突破し、裁判官になるにはどうすればいい?
最短で裁判官を目指す場合、計算上では予備試験ルートが最短です。
理論上は、大学在学中や卒業後すぐに予備試験に合格し、翌年の司法試験にも合格、そして司法修習を経て裁判官に任官すれば20代前半で裁判官(判事補)になれます。
最短で裁判官になるためには、早期から法律学習を開始し、効率的かつ集中的に勉強を進める必要があります。
予備校を効果的に利用し、質の高い教材とカリキュラムで無駄なく学習すること、そして高いモチベーションを維持し続ける精神力も不可欠です。
しかし、予備試験自体の難易度が非常に高いため、予備試験ルートは誰にでも実現可能なものではなく、圧倒的な努力が求められることを理解しておきましょう。
司法試験は独学でも合格できる?予備校に通うのがおすすめ
司法試験や予備試験に独学で合格することは不可能ではありませんが、極めて困難です。
膨大な試験範囲、複雑な法律解釈、そして論述式の答案作成技術など、習得すべき事項は多岐にわたります。
独学の場合、学習計画の立案、教材選定、進捗管理、モチベーション維持などを全て自分で行う必要があり、効率が悪くなりやすいです。
一方、予備校を利用すれば、合格実績に基づいたカリキュラム、質の高い教材、経験豊富な講師陣による指導、同じ目標を持つ仲間との情報交換など、多くのメリットがあります。
時間的にも費用的にも効率よく合格を目指すためには、予備校への通学やオンライン講座の受講を検討するのが賢明な選択と言えるでしょう。
「どこの予備校を選べばいいかわからない」という方に向けて、以下の記事で予備校のカリキュラムや料金を比較解説しているので、ぜひ合わせてご覧ください。

まとめ
裁判官になるには、最短でも4〜6年かかります。
法科大学院修了または予備試験合格で司法試験の受験資格を得て、司法試験に合格し、さらに1年間の司法修習と二回試験をクリアした後、裁判官採用選考に合格するという長い道のりとなります。
最短でも4年以上、一般的にはそれ以上の年月と多大な努力が求められる厳しい道のりです。
道のりは険しいですが、強い意志と計画的な学習、そして時には予備校などのサポートを活用することで、目標達成の可能性を高めることができるでしょう。

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