「司法試験に合格するまでって何年かかるの?」
「勉強時間はどれくらい必要?」
「弁護士になるには、どんなステップを踏むの?」
そんな疑問を抱えている方も多いのではないでしょうか。
司法試験は法律系資格の中でも最難関とされ、合格するには長期間にわたる計画的な学習と高い集中力が求められます。さらに、予備試験や法科大学院の修了など、司法試験にたどり着くまでのルートも複数あり、全体像が見えにくいのが現実です。
だからこそ、合格までにかかる期間や必要な勉強時間、試験制度の仕組みを正しく理解しておくことが重要です。
この記事では、司法試験に合格するまでにかかる年数や勉強時間の目安、合格率の実態、弁護士になるまでの具体的な流れについてわかりやすく解説します。ぜひ最後までご覧ください。
司法試験に合格するには何年かかる?2つのルートで異なる
司法試験に合格するまでにかかる時間は、選択するルートによって異なり、主なルートは次の2つです。
- 法科大学院ルート
- 予備試験ルート
法科大学院を修了して受験する(または在学中に司法試験に受験する)か、予備試験に合格して司法試験を受験するという2つのルートがあります。
それぞれのルートについて詳しく解説します。
①法科大学院ルートで合格|最短5年
法科大学院ルートを選択した場合、大学に入学してから司法試験の合格まで、最短で5年かかります。
最短で合格する具体的な流れは次のとおりです。
- 大学の法学部に入る:3年
- 大学4年生で法科大学院に入り、2年の課程を修了する:2年
- 法科大学院の在学中に合格する
大学の法学部に入り、法曹コースを活用することで、大学4年時に法科大学院に入学することが可能です。
法科大学院で2年の課程を修了することで司法試験の受験資格を得られるので、修了後に司法試験を受験するルートです。
また、2023年(令和5年)から、法科大学院の卒業見込み者であれば司法試験の受験資格が得られるので、在学中に司法試験に受験して合格を目指すこともできます。
スムーズに進んで、司法試験にも一発合格すれば最短5年で達成できる計算です。
ただし、大学を4年で卒業して法科大学院に進学する場合は最短で6年かかります。
そのほか、大学で法学部以外の学部に入っている方の場合、法科大学院は未修者コースの3年課程になるため、最短7年かかる点に注意が必要です。
そのため、大学入学から司法試験の受験資格を得るまでには、早くても5年〜7年を要すると考えておくとよいでしょう。

②予備試験ルートで合格|最短1〜3年
予備試験ルートは、法科大学院に通うことなく司法試験の受験資格を得られるルートで、最短1〜3年で司法試験合格を目指せます。
法科大学院は原則大学卒の学歴が必要ですが、予備試験(正式名称は「司法試験予備試験」)は受験資格がないため、さまざまな経歴の人が受験することができます。具体的な流れは次のとおりです。
- 予備試験の勉強を始め、合格する:1〜3年
- 司法試験に合格する:半年〜2年
学習を開始してから予備試験に合格するまでの期間は、早くて1年〜3年が目安とされています。
予備試験に合格し、その約半年後の司法試験に合格すれば最短1年で合格できる計算です。
また、予備試験は学歴や年齢に関係なく誰でも挑戦できるため、大学在学中の早い段階で合格する学生や、働きながら短期集中で合格を目指す社会人もいます。
例えば、大学1、2年生で合格すれば、法科大学院ルートに比べて数年単位で時間を短縮できます。
しかし、予備試験自体の難易度は極めて高く、合格率は例年3〜4%前後と狭き門です。
時間的なメリットは非常に大きいですが、それは圧倒的な学習量と高い学習効率が必要であることを理解しておく必要があります。
法曹コースとは?大学4年生で法科大学院に入れる
法曹になるまでの期間を短縮するため、2020年度から新設されたのが「法曹コース」です。
法曹コースとは、特定の大学法学部と法科大学院が連携し、学部段階から一貫した教育を提供するプログラムです。
法曹コースを修了すると、大学を3年で早期卒業し、法科大学院の既修者コース(2年)に進学することが可能になります。
つまり、大学4年生の年齢で法科大学院の1年生になれる制度です。
従来であれば「大学4年+法科大学院2年=計6年」かかっていたところを、「大学3年+法科大学院2年=計5年」に短縮できます。
早期に法曹としてのキャリアをスタートさせたい学生にとって大きなメリットがあります。
法科大学院ルートを選択する場合には、志望大学が法曹コースを設置しているかを確認するとよいでしょう。
【学生と社会人別】司法試験に合格するには何年かかる?
ここからは、学生と社会人で、司法試験に合格するまで何年かかるのかを解説します。
学生の場合は最短で1〜5年
現役の学生が司法試験合格を目指す場合、大学入学して司法試験に合格するまで5年かかるのが現実的です。
これは、法曹コースを活用して法科大学院の既修者コース(2年間)に進学した場合の計算です。
そのため、現役の学生はおおよそ24歳前後で司法試験の合格を目指せます。
また、大学在学中に予備試験に受験することも可能です。在学中に予備試験に合格し、その半年後に司法試験に受験すれば、1年で合格を目指すことも可能です。
そのため、学生の場合は、司法試験合格まで最短1〜5年かかると言えます。
もちろん、大学を4年間で卒業してから法科大学院に進む場合は6年かかりますし、法学部以外の出身者であればさらに期間は延びます。
社会人の場合は最短で1〜3年
社会人といっても、経歴や法律の基礎知識、選択するルートは人それぞれ異なるため、一概に何年と言い切るのは難しいです。
以下は、4つのモデルケース別の司法試験合格までにかかる年数です。
- 法学部出身者が法科大学院ルートを選ぶ:2〜3年
- 法学部以外の大卒者が法科大学院ルートを選ぶ:3〜4年
- 法律の基礎知識がある社会人が予備試験ルートを選ぶ:1〜3年
- 法律未経験の社会人が予備試験ルートを選ぶ:3〜5年
社会人が働きながら司法試験合格を目指す場合、多くは予備試験ルートを選択します。
学習を開始してから予備試験に合格し、司法試験に合格するまで1〜5年かかることが現実的です。
すでに法律に関する基礎知識がある人であれば1〜3年、法律未経験の社会人であれば3〜5年の学習期間で予備試験の合格を目指します。
また、社会人は学生と異なり、学習に充てられる時間が限られているため、より効率的な学習戦略が求められる点に注意が必要です。
予備校などを活用し、集中して学習に取り組むことで、2〜3年での予備試験合格を目指すことも可能です。

司法試験に一発合格する確率は約30〜40%
法務省のデータによれば、司法試験の受験者全体の例年約30〜40%が一発合格という結果となっています。さらに、合格者のうち例年約60〜80%が一発合格です。
【司法試験受験者で一発合格した人の割合】
| 試験年 | 受験者数 | 1回目で合格した数 | 1回目の合格率 |
|---|---|---|---|
| 令和6年度 | 3,779人 | 1,211人 | 32.0% |
| 令和5年度 | 3,928人 | 1,584人 | 40.3% |
| 令和4年度 | 3,082人 | 1,046人 | 33.9% |
| 令和3年度 | 3,424人 | 1,024人 | 29.9% |
| 令和2年度 | 3,703人 | 960人 | 25.9% |
【司法試験合格者の受験回数】
| 試験年 | 1回目 | 2回目 | 3回目 | 4回目 | 5回目 |
|---|---|---|---|---|---|
| 令和6年度 | 76.1% | 18.6% | 2.8% | 1.8% | 0.8% |
| 令和5年度 | 88.9% | 6.9% | 2.0% | 1.3% | 0.8% |
| 令和4年度 | 74.6% | 12.8% | 6.3% | 3.3% | 3.0% |
| 令和3年度 | 72.1% | 12.2% | 7.1% | 5.3% | 3.3% |
| 令和2年度 | 66.2% | 15.3% | 8.7% | 5.9% | 3.9% |
| 令和元年度 | 58.9% | 18.8% | 9.3% | 7.2% | 5.9% |
一発合格を逃すと、合格までの年数がさらに1〜2年と延びていく可能性があるため、初回受験で合格できるよう、万全の準備で臨むことが重要です。
しかし、受験者全体で見ると、一発合格できるのは約30〜40%と決して少なくありません。
また、全体の約90%は1〜2回目の受験で合格していることもわかります。
司法試験に5回落ちたらどうなる?受験資格を失う
司法試験には受験回数に制限が設けられています。
現在の制度では、司法試験の受験資格を得てから、5年以内に5回までしか受験することができません。
期間または回数のいずれかを超えてしまうと、一度取得した受験資格は失効してしまいます。
例えば、5回不合格になった場合、再び司法試験に挑戦するためには、もう一度法科大学院を修了するか、再度予備試験に合格して、受験資格を取り直さなければなりません。
受験生にとって非常に大きなプレッシャーとなる制度ですが、これは受験生の長期化を防ぎ、早期に社会に出ることを促すという目的があります。
司法試験に合格して法曹資格を取得するまでの流れ
司法試験に合格した後、すぐに弁護士などの法曹になれるわけではありません。司法試験に合格後は、司法修習生として1年間の課程を修了する必要があります。
学習を始めてから、司法試験に合格して法曹資格を取得するまでの流れは次のとおりです。
- 司法試験の受験資格を取得する
- 司法試験に合格する
- 司法修習を経て二回試験に合格する
- 法曹(弁護士・検察官・裁判官)になる
それぞれ詳しく解説します。
STEP1.司法試験の受験資格を取得する
法曹になるための最初のステップは、司法試験の受験資格を取得することです。
受験資格を得る方法は、基本的に「法科大学院ルート」と「予備試験ルート」の2つです。
大学を卒業後、法科大学院に進学し、2年間(または3年間)の課程を修了することで受験資格が得られます。
法科大学院ルートは時間と費用がかかる一方で、体系的な教育を受けられることが特徴です。
また、予備試験は学歴や年齢に関係なく誰でも受験できる試験で、合格率は低いものの、合格することで受験資格を得られます。
予備試験ルートは短期間で法曹を目指せるものの、試験難易度が極めて高いという特徴があります。
自身の状況や学習スタイル、キャリアプランに合わせて、どちらのルートで受験資格を目指すのかを最初に決定しましょう。
STEP2.司法試験に合格する
受験資格を得たら、いよいよ司法試験本番に臨みます。
司法試験は、法律基本7科目に選択科目を加えた論文式試験と、基本7科目の短答式試験から構成されています。
毎年1回、7月中旬に4日間の日程で実施され、合格発表は例年11月上旬です。
司法試験は、単なる知識の暗記量だけでなく、複雑な事案を分析し、法的な思考過程を論理的に示す能力が問われる、非常に難易度の高い国家試験です。
合格率は近年上昇傾向にあり、過去の合格率は以下のようになっています。
| 年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
|---|---|---|---|
| 令和6年度 | 3,779人 | 1,592人 | 42.1% |
| 令和5年度 | 3,928人 | 1,781人 | 45.3% |
| 令和4年度 | 3,082人 | 1,403人 | 45.5% |
| 令和3年度 | 3,424人 | 1,421人 | 41.5% |
| 令和2年度 | 3,703人 | 1,450人 | 39.2% |
| 令和元年度 | 4,466人 | 1,502人 | 33.6% |
司法試験に合格した後は、次のステップである司法修習に進むことができます。
STEP3.司法修習を経て二回試験に合格する
司法試験に合格しても、すぐに弁護士や検察官、裁判官になれるわけではありません。試験に合格後は、約1年間にわたる「司法修習」を修了する必要があります。
司法修習では、全国各地の裁判所、検察庁、弁護士会に配属され、実務家の指導のもとで法曹として必要な実践的なスキルや知識、職業倫理などを学びます。
修習期間、司法修習生は修習給付金(給与にあたる)を受けながら研修に専念することが必要です。
修習修了時は、1年間の司法修習の総仕上げとして、「二回試験」ともよばれる司法修習生考試に合格して、はれて法曹資格を取得できます。
不合格となるケースは稀ですが、油断は禁物です。

STEP4.法曹(弁護士・検察官・裁判官)になる
法曹資格を取得後は、弁護士・検察官・裁判官のいずれかのキャリアをスタートさせることができます。
弁護士になる場合は、日本弁護士連合会などの登録手続きが必要です。
検察官や裁判官を志望する場合は、司法修習中の成績や本人の希望などを基に採用が決まり、誰でもなれるわけではありません。
そのため、法曹資格を取得した多くの人は、弁護士として法律事務所に就職したり独立開業したりします。

司法試験の勉強時間はどのくらい必要?5,000〜8,000時間が目安
司法試験合格に必要な総勉強時間は、一般的に5,000時間〜8,000時間程度が目安とされています。
これは、法律知識が全くない状態から、難解な法律基本7科目と選択科目を深く理解し、論文を書けるレベルまで到達するために必要な時間です。
もちろん、法学部出身者や学習経験者であれば、より短い時間で済む場合もありますが、それでも数千時間単位の学習は避けられません。
膨大な学習時間を確保するためには、長期的な視点に立った計画性と、日々の地道な努力の積み重ねが不可欠です。
1日・1週間の学習時間だけでなく、年単位でどれだけの時間を学習に投下できるかを計算し、現実的な計画を立てることが重要になります。
平日や休日のスケジュール例
5,000時間以上の学習時間を確保するためには、日々の生活の中に勉強を組み込む具体的なスケジュールが必要です。
例えば、働きながら合格を目指す社会人の場合、以下のようなスケジュールが考えられます。
【平日】
- 出勤前(1時間):頭を使う論文構成の練習
- 通勤・退勤時(1時間):短答式の問題を解く
- 帰宅後(2時間):講義の視聴、その日の復習
1日の合計:3〜4時間
【土日・休日】
- 午前:4時間
- 午後:4〜5時間
1日の合計:8〜9時間
平日はスキマ時間を活用して基礎知識の学習に時間をあて、休日は過去問を時間を計って解いたり、苦手科目を集中的に学習したりしましょう。
重要なのは、学習計画を毎日・毎週継続することです。
社会人が勉強時間を確保するコツ!スキマ時間を活用する
仕事を持つ社会人にとって、学習時間を確保するための最大のコツは「スキマ時間」の徹底活用です。
生活スタイルは人それぞれ異なりますが、社会人には例えば以下のようなスキマ時間があると考えられます。
- 通勤中の電車内
- 職場の昼休み
- 仕事の合間の休憩時間
- 待ち合わせの前の数分間
1日に確保できるまとまった時間は限られているため、細切れの時間をいかに有効に使うかが合否を分けます。
スマホやタブレットに教材のPDFや音声講義を入れておけば、いつでもどこでも学習が可能です。
単語帳アプリで重要判例のキーワードを暗記したり、短答式の問題を1問でも解いたりする習慣をつけましょう。
こうした5分・10分の積み重ねが、1ヶ月・1年という単位で見ると、数百時間という膨大な学習時間になります。
司法試験に短期合格するためのポイント
司法試験に短期合格するための勉強のポイントは、主に次の3つです。
- インプットとアウトプットをバランスよく行う
- モチベーション維持を意識する
- 予備校を利用する
それぞれ詳しく解説します。
ポイント①インプットとアウトプットをバランスよく行う
司法試験に短期合格するためには、知識をインプットする学習と、問題を解くアウトプットの学習を、バランスよく繰り返すことが極めて重要です。
多くの受験生が、まずは完璧に知識をインプットしようと、教科書や予備校のテキストを読み込むことに時間を費やしがちです。
しかし、インプットばかりでは実際に問題を解く力は身につきにくく、学習効率が悪いです。
早い段階から過去問などの演習にも取り組み、自分の知識がどのように問われるのか、何が足りないのかを把握することが大切です。
アウトプットを通じて課題を見つけ、それを補うために再度インプットに戻る。
この「インプット・アウトプット」のサイクルを高速で回転させることが、知識を定着させ、実践的な答案作成能力を効率的に高める最短ルートなのです。
ポイント②モチベーション維持を意識する
司法試験は長期戦であり、合格までの道のりでは必ずモチベーションが低下する時期が訪れます。
そのため、短期合格を目指す上では、学習計画と同じくらいモチベーションの維持を意識することが重要です。
まず、「なぜ弁護士になりたいのか」という根本的な目的を常に忘れないようにしましょう。
また、大きな目標だけでなく、「今週はこの範囲を終わらせる」といった短期的な目標を設定し、達成感を積み重ねることも有効です。
そのほか、勉強仲間を見つけて進捗を報告し合ったり、たまには思い切って休んでリフレッシュしたりすることも必要です。
自分なりのモチベーション管理術を確立し、精神的に安定した状態で学習を継続できるかどうかが、合格までの期間を大きく左右します。
ポイント③予備校を利用する
司法試験の短期合格を目指すのであれば、独学ではなく予備校を利用することを強くおすすめします。
予備校は、長年の指導ノウハウに基づき、合格に必要な知識を網羅した効率的なカリキュラムを提供してくれます。
何から手をつければいいかわからないという状態を避け、最短ルートで学習を進めることが可能です。
また、質の高いテキストや、自分の答案を客観的に評価してもらえる添削指導、最新の試験情報なども手に入ります。
費用はかかりますが、独学で何年も遠回りをしてしまったり、独学に失敗したりするリスクなどを比較すると、予備校を利用するメリットは大きいです。
予備校を活用して合格の可能性と効率を最大化することが、結果的に最も賢明な選択と言えるでしょう。
以下の記事では、予備校のカリキュラムや料金を比較解説していますので、ぜひあわせてご覧ください。

まとめ
司法試験に合格し法曹になるまでの期間は、選択するルートによって大きく異なり、最短でも数年単位の時間を要します。
法科大学院ルートでは大学入学から最短5年、予備試験ルートでは学習開始から1〜3年が目安となりますが、どちらも決して楽な道ではありません。
合格後も約1年間の司法修習があり、法曹としてのキャリアをスタートさせるまでには長い時間と努力が必要です。
ご自身の状況に合わせた現実的な計画を立て、法曹への第一歩を踏み出しましょう。

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