「司法修習って働きながらでもできるの?」
「収入がないと生活が不安…」
「社会人経験者でも司法修習を受けられるのか知りたい!」
こうした不安や疑問を抱えている方も多いのではないでしょうか。
司法修習は、司法試験合格後に裁判所・検察庁・弁護士事務所で行う実務研修であり、弁護士・裁判官・検察官になるために必須のプロセスです。
基本的にフルタイムでの参加が求められ、副業・兼業は禁止されているため、働きながら修習することはできません。
ただし、修習中には給付型の修習資金や貸与制度などの経済的支援も用意されています。
この記事では、司法修習中に働くことができるのか、給付金制度の仕組み、そして社会人から法曹を目指す人が修習期間をどう乗り切るかといった現実的な選択肢について詳しく解説します。司法修習を控える方や社会人受験生の方は、ぜひ参考にしてください。
司法修習生に給与はある?修習給付金を受け取れる
司法修習生には給与はありませんが、経済的な支援として修習給付金制度が設けられています。
修習給付金制度は、給付期間ごとに基本給付金が給付されるのに加え、住居を借りて家賃を支払っている場合は住居給付金も給付されます。給付金額は以下のとおりです。
- 基本給付金:135,000円
- 住居給付金:35,000円
- 移転給付金:最高裁判所の定める路程に応じた定額
また、支給日は次のとおりです。(第78期)
| 基本給付金の支給日 | 住居給付金の支給日 | |
|---|---|---|
| 第1回 | 令和7年4月15日 | 令和7年5月15日 |
| 第2回 | 5月15日 | 6月16日 |
| 第3回 | 6月16日 | 7月15日 |
| 第4回 | 7月15日 | 8月15日 |
| 第5回 | 8月15日 | 9月16日 |
| 第6回 | 9月16日 | 10月15日 |
| 第7回 | 10月15日 | 11月17日 |
| 第8回 | 11月17日 | 12月15日 |
| 第9回 | 12月15日 | 令和8年1月15日 |
| 第10回 | 令和8年1月15日 | 2月16日 |
| 第11回 | 2月16日 | 3月16日 |
| 第12回 | 3月16日 | 4月15日 |
| 第13回 | 4月15日 | 5月15日 |
修習給付金制度は雇用契約に基づく給与ではないため、所得税の扱いや社会保険の加入状況などは一般的な会社員とは異なります。
司法修習は働きながらでも可能?兼業・副業は原則禁止
司法修習期間中は、兼業・副業が原則禁止です。
働きながら司法修習を行うことはできず、現在働いている場合は仕事を辞めなければなりません。
司法修習期間中は、法曹三者(裁判官、検察官、弁護士)としての品位を保ち、修習に専念する義務があるためです。
アルバイトを含む営利業務に従事することは、修習への集中を妨げる可能性があると判断されます。
もし無許可で兼業や副業を行った場合、司法修習生としての身分を失う可能性もあるため、厳格なルールとして認識しておく必要があります。
司法修習生は貸与を受けられる!修習専念資金制度を活用する
修習給付金だけでは生活が苦しい場合、修習専念資金の貸与制度を利用することも可能です。
修習専念資金は、修習期間中の生活費や転居費用などを補うため、最高裁判所の司法修習生向けに行っている無利子の貸与制度です。
貸与される基本額は月10万円で、最大13回交付されます。修習終了後5年間は返還が据え置きになり、その後10年間の年払いで返還するという好条件です。
また、貸与申請には一定の要件を満たす必要があります。
修習専念資金の貸与額や手続き方法、保証人については、最高裁判所のHP「司法修習生に対する修習専念資金の貸与生の概要(第71期以降)」をご覧ください。
修習給付金と合わせて修習専念資金制度を上手く活用することで、安心して修習に取り組めるでしょう。
社会人は休職して司法修習に行くことも可能
すでに社会人として働いている方が司法試験に合格した場合、司法修習に参加するためには現在の仕事をどうするかという問題が生じます。
司法修習を受ける場合、基本的に仕事を辞めなければいけませんが、勤め先の企業が許せば、休職扱いで司法修習を受けることも可能です。
また、企業によっては、法務部門の強化などを目的に、社員の司法修習を支援する制度を設けている場合もあります。
休職が認められれば、修習終了後に復職できる可能性があり、リスクヘッジできることが特徴です。
しかし、必ずしも全ての企業で休職制度が整っているわけではありません。
そのため、社会人合格者の方は、合格前から勤務先の就業規則を確認したり、人事担当者と相談したりするなど、早めの準備と確認が不可欠です。
一部認められれば副業・兼業は可能!認可の条件は?
やむを得ない理由がある場合、最高裁判所の許可を得れば、例外的に兼業・副業が認められることがあります。
司法修習生が副業・兼業を行う場合は、最高裁判所に申請する必要があります。
具体的な許可基準は定められていませんが、修習に支障がないことが前提です。
そのため、業務内容や業務量、勤務時間のほか、中立公立性、守秘義務を害さない業務かどうかを考慮し、事例ごとに個別に事情を確認して判断されます。
修習給付金や修習専念資金でも生活が苦しいなど、やむを得ない理由がある方は、副業・兼業の許可を申請するのも選択肢のひとつです。
また、無許可での兼業は厳しい処分対象となるため、自己判断は禁物です。
司法修習生で副業・兼業が認められることのある業務
司法修習中の兼業は原則禁止で、兼業許可の判断も厳密に審査したうえで判断されます。
そのうえで、司法修習の兼業が認められることのある業務には以下があります。
- 答案添削の業務
- 講師業務
- 法律関係のコラムや論文の執筆
- 予備校講師、塾講師、家庭教師
法律に関連する知識や経験を活かせるものであれば、兼業が認められる可能性があります。
例えば、予備校や大学などで行われる答案添削の業務、講師業務は自身の受験経験や法律知識を活かせ、法曹としての資質向上にもつながると考えられます。
修習スケジュールとの両立もしやすいため、兼業が比較的認められやすいです。
ただし、無許可での兼業は厳しい処分対象となるため、必ず事前に司法研修所に相談し、正式な手続きを行いましょう。
すぐに司法修習に行かなくてもいい?受けるタイミングは自由
司法試験に合格した後、すぐに司法修習を受けなければならないという決まりはありません。
合格者が自身のキャリアプランや個人的な事情に応じて、修習を受けるタイミングをある程度自由に選択することが可能です。
例えば、社会人として勤務していてすぐに退職や休職が難しいケースや、経済的な基盤を整えてから修習に臨みたいと考え、司法修習を後回しにする人もいます。
また、海外留学や他の資格取得など、自己研鑽の時間を持ちたいという理由で修習を遅らせる人もいます。
ただし、修習を延期する人は少数であり、司法試験合格後すぐに修習に進むのが一般的です。
また、希望すればいつでも自由に始められるわけではなく、修習期ごとに定員が定められています。
希望する時期に修習が受けられない可能性もゼロではないため注意が必要です。
司法修習を延期するメリット
司法修習をすぐに受けずに延期することには、以下のメリットが考えられます。
- 社会人におけるさまざまな経験を得られる
- 修習期間中のための資金を貯められる
- キャリアプランを考える時間が持てる
あらかじめ社会人経験を積むことで、法律以外の分野における、実務知識や対人折衝能力、組織運営の理解などを深めることができます。
これらの経験は、弁護士として活動する際に依頼者の状況を多角的に理解し、より実践的なアドバイスをする上で役立つでしょう。
また、修習期間中は収入が限られるため、就職して資金を貯めておくことで、経済的な不安なく修習に専念できるというメリットもあります。
さらに、自身のキャリアプランをじっくりと練り直し、どの分野の法曹を目指すのか、どのようなスキルを身につけたいのかを明確にする時間を持つことも可能です。
司法修習を延期するデメリット
司法修習を延期することには、次のようなデメリットも存在します。
- 時間とともに法律知識を忘れてしまう
- 最新の法制度のキャッチアップが大変になる
- 同期との年齢差が大きくなる
最も大きなデメリットは、司法試験で習得した法律知識を忘れてしまう可能性があることです。
さらに、法律は日々改正されており、長期間ブランクが空くと、最新の法制度や判例へのキャッチアップが大変になることも考えられます。
また、年齢が上がるにつれて体力や集中力の低下を感じたり、家庭環境の変化によって修習に専念しにくくなったりする可能性も否定できません。
同期となる修習生との年齢差が大きくなることで、コミュニケーション面で若干の戸惑いを感じる人もいます。
司法修習に行かずに弁護士になることはできる?弁護士資格認定制度を活用する
日本で弁護士になるためには、司法試験に合格した後、原則的に司法修習を修了する必要があります。
しかし、例外的に司法修習を経ずに弁護士資格を得る方法として「弁護士資格認定制度」が存在します。
弁護士資格認定制度は、司法修習の課程を修了した者と同等以上の学識及びその応用能力を有すると、法務大臣が認定した場合に弁護士資格を与えるものです。
企業や官公庁での実務経験など、特定の職務経験を有する人が、その経験と能力を評価されれば、高い専門性を持つ弁護士として認定されることがあります。
例えば、司法試験に合格後、大学の法学教授や准教授、公務員として法律学の職に一定期間以上従事した者や、裁判所事務官、検察事務官などとして特定の法律事務に長年携わった者などが対象となり得ます。
ただし、当制度で弁護士になるのは非常に限られたケースであり、司法修習を修了するのが一般的です。
弁護士資格を認定されるまでの流れや条件など、制度について詳しく知りたい方は、法務省の公式HP「弁護士資格認定制度」をご確認ください。
司法修習生に期限はある?
いつまでに司法修習を開始しなければならないという、明確な期限は設けられていません。
つまり、司法試験合格の資格が失効するということはありません。
そのため、合格後すぐに修習に行かず、数年後に修習を開始することも制度上は可能です。
しかし、あまりにも長期間経過してしまうと、法律知識を忘れたり法改正に対応できなかったりする可能性があるので注意が必要です。
司法修習は必ずしも寮に入る必要はない
司法修習では、和光市にある司法研修所の寮「いずみ寮」に入寮する選択肢があります。
しかし、必ずしも全員が寮に入る必要はありません。
司法修習には、実務修習・導入修習・集合修習の3つの段階があり、導入修習(約1ヶ月)と集合修習(約2ヶ月)の期間は、必ず埼玉県和光市の司法研修所で行わなければなりません。
そのため、自宅から通える範囲に住んでいる修習生は、入寮せず自宅から通学することが可能です。
寮生活は同期との交流が深まりやすく、通学時間が短いといったメリットがありますが、プライベートな時間の確保が難しいと感じる人もいます。
自身の生活スタイルや経済状況、修習への取り組み方などを総合的に考慮して、量を利用するかどうか決めましょう。入寮を希望する場合は、事前に申し込み手続きが必要です。
司法修習生に社会人はいる?
司法修習生の年齢や属性は公開されておらず、司法修習生における社会人の割合はわかりません。
しかし、社会人から司法修習生になる人は少なくないと考えられます。
実際、司法試験合格者の割合は平均が20代後半となっており、学生だけではないことがわかります。
学生から勉強を続けているケースも多いと考えられますが、それでも社会人経験がある修習生が一定数いることは確実です。

司法修習はすぐに行かなくてもいいが早期合格がおすすめ
司法試験合格後、すぐに司法修習に行かなければならないというわけではありません。個々の事情に合わせてタイミングを選択する余地はあります。
しかし、法曹を目指すのであれば、司法試験に早期に合格するのがおすすめです。
司法試験に早い段階で合格しておけば、自分のキャリアプランの選択肢を広げられます。
司法修習のタイミングは自由なので、司法試験合格後に語学留学したり、社会人経験を積んだりすることもできます。
また、司法試験は勉強期間が長ければ合格しやすいわけではないため、できる限り短期に勉強を終わらせるのが、司法試験合格のコツです。
もし司法試験や予備試験の早期合格を目指すなら、予備校を利用しましょう。
以下の記事で、予備校の料金やカリキュラムについて比較解説しているので、「どこの予備校に通えばいいかわからない」という方は、ぜひあわせてご覧ください。

まとめ
司法修習は原則副業・兼業が禁止のため、働きながら司法修習を受けることはできません。
しかし、司法修習には、修習給付金や修習専念資金などの制度があり、経済的支援も受けられます。
また、やむを得ない理由であれば、一部の業務に限って副業・兼業が許可される可能性もあります。
これから法曹を目指すという方は、短期的な学習で早期合格を目指しましょう。

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