宅建士は国家資格ではないって本当?誤解される理由や国家資格になった敬意を解説

宅建士は国家資格ではないって本当?誤解される理由や国家資格になった敬意を解説

「宅建士って国家資格じゃないの?」
「昔は『宅建主任者』だったけど、何が変わったの?」
「国家資格になった経緯を知りたい!」

そんな疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。

宅地建物取引士(宅建士)は不動産取引に欠かせない資格ですが、インターネット上では「国家資格ではない」と誤解されることもあります。

実際には、法律に基づいて国が定めるれっきとした国家資格であり、名称変更や制度改正の経緯を知ることでその背景が理解できます。

この記事では、宅建士が国家資格である理由や、「国家資格ではない」と誤解されやすい原因、さらに宅建主任者から宅建士へと変わった経緯についてわかりやすく解説します。資格の信頼性や意義を改めて確認していきましょう。

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目次

宅建士は国家資格ではない?実は国家資格

「宅建士は国家資格ではない」というのは間違いです。宅地建物取引士(宅建士)は、宅地建物取引業法という法律に基づいて国土交通省が管轄する、れっきとした国家資格に分類されます。

不動産取引は高額な資産が動くため、専門知識を持たない消費者が不利益を被らないよう、法律で厳格なルールが定められています。

宅建士は、不動産取引の専門家として、契約内容や物件に関する重要事項を説明する重要な存在です。

国家資格であるからこそ、その業務には重い責任が伴い、社会的な信用も非常に高いです。

宅建士が国家資格に分類される理由

宅建士は、設置根拠が国の法律にあるため、国家資格として分類されています。

そもそも国家資格とは、国の法律に基づいて、個人の知識や技能が一定水準以上であることを国や国から委託された機関が証明する資格を指します。

宅建士は「宅地建物取引業法」という法律によって制度が定められており、資格の付与や業務内容が法的に規定されています。

試験に合格し、都道府県知事の登録を受け、宅建士証の交付を受けることで、初めて法律に基づいた専門家として活動できます。

民間資格が任意の団体によって認定されるのに対し、宅建士は国の法律がその地位と役割を保証しているため、国家資格に分類されるのです。

宅建士資格を認定している機関

宅建士資格制度全体を管轄している省庁は、国土交通省です。

宅地建物取引業法を所管しているのが国土交通省であるため、その法律に基づく宅建士資格も同省の管理下にあります。

ただし、実際の業務は複数の機関によって分担されています。

年に一度の宅建士試験を運営・実施しているのは、国土交通大臣から指定を受けた「一般財団法人 不動産適正取引推進機構」です。

そして、試験合格後の資格登録や、業務に必須となる宅建士証の交付・更新手続きは、実際に業務を行う各都道府県の知事が行います。

つまり、制度の根幹は国(国土交通省)が定め、試験の実施は指定試験機関、登録実務は地方自治体(都道府県)が担うという構造になっています。

「宅建士は国家資格ではない」と誤解される理由

「宅建士は国家資格ではない」と誤解される理由として、以下が挙げられます。

  • 宅建士という名称が新しく浸透していない
  • 試験を実施しているのが国ではない
  • 登録や更新を地方自治体が行っている

それぞれ詳しく解説します。

理由①宅建士という名称が新しく浸透していない

宅建士が国家資格ではないと誤解される最も大きな理由の一つが、その歴史です。

宅建士は、2015年4月の宅地建物取引業法の改正までは「宅地建物取引主任者」という名称でした。

約60年もの間「宅建主任者」や「宅建」の通称で広く認知されていたため、法改正から時間が経過した現在でも、昔の名称のイメージが根強く残っています。

特に不動産業界に馴染みのない人にとっては、「宅建士」という新しい名称に聞き覚えがなく、別の資格だと認識してしまうケースも少なくありません。

名称変更は、不動産取引の高度化・複雑化に対応するため、専門家の責任と役割をより明確にし、社会的地位を向上させる目的で行われました。

弁護士や税理士と同じ「士」がつく士業に格上げすることで、資格の権威性を高める狙いがありましたが、その過渡期において、新名称の認知度が追い付いていないことが誤解の一因となっているのです。

理由②試験を実施しているのが国ではない

「国家資格なのだから、試験は国が直接実施しているはずだ」というイメージから、誤解が生じるケースもあります。

宅建士試験は、国土交通省が直接運営しているわけではなく、国土交通大臣が指定した「一般財団法人 不動産適正取引推進機構」という機関が試験事務を行っています。

そのため、「試験の実施団体が国ではないから、国家資格ではない」と早合点してしまう人も少なくありません。

しかし、国家資格の試験運営を、国が指定した外部機関に委託する例は数多く存在し、例えば、情報処理技術者試験は独立行政法人が、FP技能検定は指定された民間団体が実施しています。

重要なのは、誰が試験を運営しているかではなく、国の法律に基づいて国の監督下で試験が実施されているという点です。

不動産適正取引推進機構は、あくまで国の定めたルールに従って試験を代行しているに過ぎず、資格の国家資格としての性質に何ら影響はありません。

理由③登録や更新を地方自治体が行っている

宅建士試験に合格した後、資格登録や宅建士証の交付申請は、国ではなく、業務を行いたい都道府県の知事に対して行います。

5年ごとの更新手続きも同様に都道府県が窓口です。

このように、手続きの窓口が地方自治体であることから、「国の資格ではなく、都道府県が認定する公的資格なのではないか」という誤解が生まれることがあります。

しかし、宅建士の資格制度そのものは国の法律である宅地建物取引業法で定められており、全国共通の効力を持っています。

登録手続きを都道府県が行うのは、不動産取引が各地域の事情に密接に関わる業務であり、地域の実情を把握している都道府県が監督する方が合理的であるという理由からです。

手続きの窓口がどこであれ、資格の根拠が国の法律にあることに変わりはなく、宅建士が国家資格であることに疑いの余地はありません。

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宅建士が国家資格となった経緯

宅建士制度は、最初から現在の形だったわけではなく、社会の変化に対応しながら段階的に発展してきた歴史を持ちます。

もともとは、昭和32年(1957年)に制定された「宅地建物取引業法」で、当初は宅地建物取引主任者という制度は存在していませんでした。

届出制であり、不動産取引の知識を持つ人材を確保することが主な目的でした。

しかし、不動産取引をめぐるトラブルが増加したことを受け、翌年の昭和33年(1958年)には試験制度が導入され、一定の能力を客観的に証明する仕組みが整えられることとなります。

その後、昭和39年(1964年)の法改正により試験制度が導入され、「宅地建物取引主任者」の制度が正式にスタートしました。

この改正で重要事項の説明が義務化されるなど、専門家としての責任がより明確化されました。

そして、不動産取引のさらなる高度化・複雑化を背景に、平成26年(2014年)の法改正で名称が「宅地建物取引士」へと変更

「士業」として格上げされ、より高い専門性と倫理観が求められる現在の姿になりました。

宅建士の特徴とは?3つの独占業務と仕事内容

宅建士を特徴づける最も重要な要素は、法律によって定められた「独占業務」です。

不動産取引における極めて重要な以下3つの業務は、宅建士の資格を持つ者でなければ行うことができません。

  • 重要事項の説明
  • 重要事項説明書への記名(第35条書面)
  • 契約書への記名(第37条書面)

それぞれ詳しく解説します。

①重要事項の説明

宅建士の独占業務の中で、最も中心的な役割を果たすのが「重要事項の説明」です。

不動産の売買や賃貸の契約を結ぶ前に、買主や借主となる人に対して、物件や取引条件に関する重要な情報を口頭で説明する業務を指します。

説明する内容は、登記された権利の種類や内容、法令上の制限、水道・ガス・電気の供給施設、代金の支払い方法など多岐にわたります。

説明を通じて、相手方が十分に情報を理解し、納得した上で契約に進めるのが宅建士の役割です。

②重要事項説明書への記名(第35条書面)

重要事項の説明を行う際には、説明した内容をすべて記載した「重要事項説明書(通称:第35条書面)」という書面を作成し、相手方に交付しなければなりません。

宅建士は、この書面の内容に間違いがないかを確認し、責任の所在を明らかにするために、自身の氏名を記名する義務があります。

記名があることで、書面の内容が宅建士という専門家によって確認されたものであることが証明されます。

万が一、書面の内容に不備があり顧客に損害を与えた場合、記名した宅建士が責任を問われることになるため、書面への記名は、専門家としての責任を求められる重要な業務です。

③契約書への記名(第37条書面)

売買契約や賃貸借契約が正式に成立した際、当事者へ交付される「契約書(通称:第37条書面)」への記名も、宅建士の独占業務です。

この書面には、物件の表示、代金の額や支払い時期、物件の引渡し時期など、当事者間で合意した契約内容のすべてが記載されています。

宅建士は、記載された内容が法的に問題なく、当事者間の合意内容と相違ないことを確認した上で記名します。

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宅建士を取得するメリット

宅建士は、取得することで多くのメリットが得られる、非常にコストパフォーマンスの高い国家資格です。

宅建士を取得するメリットには、主に以下があります。

  • 就職・転職に強い
  • 資格手当で収入アップが期待できる
  • 不動産取引を自分で行える
  • 副業や独立・開業にも有利
  • 他資格とのダブルライセンスで活かせる

それぞれ詳しく解説します。

メリット①就職・転職に強い国家資格

宅建士資格が就職や転職に非常に有利なのは、宅地建物取引業法に定められた設置義務があるためです。

不動産会社は、事務所ごとに従業員5人に対して1人以上の割合で、専任の宅建士を置かなければならないと法律で決められています。

このルールがあるため、不動産業界では常に宅建士の需要が存在し、求人がなくなることはありません。

不動産売買仲介、賃貸仲介、物件管理、デベロッパーなど、業界内でのキャリアの選択肢も豊富です。

さらに、宅建士の知識は不動産業界だけに留まらず、企業の資産を管理する総務・管財部門や、不動産担保ローンを扱う金融機関、住宅を建設・販売する建設業界など、幅広い分野で活かすことができます。

未経験から不動産業界を目指す場合でも、資格を持っていることで学習意欲と専門知識をアピールでき、採用の可能性を大きく高めることができます。

メリット②資格手当で収入アップが期待できる

宅建士資格を取得する大きな経済的メリットとして、資格手当による収入アップが挙げられます。

多くの不動産会社では、宅建士資格の保有者に対して、毎月の給与に上乗せする形で資格手当を支給しています。

手当の金額は企業によって異なりますが、一般的には月額1〜3万円程度が相場です。

年間に換算すれば12〜36万円となり、家計にとって大きなプラスになります。

企業が手当を支給するのは、宅建士が独占業務を担う法律上の必須人材であり、事業運営に欠かせない存在だからです。

また、重要事項の説明や契約といった重要な業務に携わることで、顧客からの信頼を得やすくなり、営業成績にも繋がりやすくなります。

基本給の底上げとなる資格手当と、成果に応じたインセンティブの両方で、高い年収を目指すことが可能になります。

メリット③不動産取引を自分で行える

宅建士の学習で得られる専門知識は、プロとして仕事で活かせるだけでなく、自分自身のプライベートな不動産取引においても強力な武器となります。

多くの人にとって人生で最も大きな買い物であるマイホームの購入や、将来の資産形成のための不動産投資、あるいは賃貸物件を借りる際など、不動産に関わる場面は多々あります。

宅建士の知識があれば、契約書や重要事項説明書に書かれている専門的な内容を正確に理解可能です。

物件の権利関係や法的な制限、潜在的なリスクなどを自ら判断できるため、不動産会社の担当者の説明を鵜呑みにすることなく、不利な条件で契約してしまうリスクを回避できます。

メリット④副業や独立・開業にも有利

宅建士資格は、本業以外の収入源となる副業や、将来的な独立・開業への道も開いてくれます。

宅建士の需要は高いため、例えば週末だけ不動産会社でアルバイトとして働き、重要事項の説明などを行うといった働き方も可能です。

また、不動産に関する専門知識を活かして、Webメディアで不動産関連の記事を執筆するライターとして活動したり、自身の経験をもとにセミナー講師を務めたりするなど、知識をマネタイズする方法は多岐にわたります。

さらに、宅建士として実務経験を積めば、宅地建物取引業の免許を取得して自身の会社を設立することも可能です。

不動産業を開業するには専任の宅建士の設置が必須条件であるため、自分が宅建士であれば、この条件をクリアでき、開業のハードルが大きく下がります。

メリット⑤他資格とのダブルライセンスで活かせる

宅建士は単体でも価値の高い資格ですが、他の資格と組み合わせることで、専門性をさらに高め、活躍のフィールドを広げることができます。

複数の資格を有する人は、「ダブルライセンス」「トリプルライセンス」などとよばれます。

例えば、お金の専門家であるファイナンシャルプランナー(FP)の資格を取得すれば、不動産という資産の側面に加え、住宅ローンや税金、保険といった顧客のライフプラン全体を考慮した総合的なコンサルティングが可能です。

また、マンション管理士や管理業務主任者の資格と組み合わせれば、不動産管理の分野での専門性を強化できます。

さらに、司法書士や行政書士といった法律系の難関資格と組み合わせれば、不動産取引から登記手続きまでをワンストップで提供できるようになり、顧客から絶大な信頼を得ることができるでしょう。

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宅建士を取得できない・なれないケースはある?

宅建士試験は年齢や学歴に関係なく誰でも受験できます。しかし、試験に合格したからといって、誰もが宅建士になれるわけではありません。

宅地建物取引業法には「欠格事由」という規定があり、これに該当する人は宅建士として都道府県に登録することができません。

宅建士を取得できない・なれないケースとして以下が挙げられます。

  • 前科がある
  • 自己破産している
  • 未成年
  • 精神の障害を抱えている
  • 試験に合格しても登録できないケース

それぞれ詳しく解説します。

①前科がある

過去に禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行が終了した日(または執行を受けることがなくなった日)から5年が経過していない場合は、宅建士として登録できません。

また、宅地建物取引業法違反や暴力的な犯罪など、特定の法律に違反して罰金の刑に処せられた場合も、同様に刑の執行が終わってから5年間は登録が認められません。

高額な財産を扱う宅建士には、高い遵法意識が求められるためです。

②自己破産している

自己破産の手続きを裁判所に申し立て、免責許可の決定が確定していない人は、宅建士として登録することができません。

破産手続き中の人は、法律上、財産を管理・処分する能力が制限されている状態(復権を得ていない状態)とみなされます。

顧客の大切な資産を扱う宅建士の業務には、正常な財産管理能力が不可欠と判断されるため、この期間は欠格事由に該当します。

③未成年

宅建士試験には年齢制限がないため、未成年者でも受験し、合格することが可能です。

しかし、宅建士として登録するためには、成年に達している必要があります。

民法上、未成年者は一人で法律行為(契約など)を完結させることができず、親権者の同意が必要で、不動産取引という重要な契約行為に携わる宅建士には、完全な行為能力が求められるためです。

したがって、試験に合格しても、18歳(※)になるまでは登録申請ができません。
※民法改正により成年年齢は18歳に引き下げられました。

ただし、未成年者であっても、親権者の同意がある場合など、行為能力を有すると認められる場合は登録可能です。

④精神の障害を抱えている

心身の故障により宅建士としての業務を適正に行うことができないと認められる場合は、登録できません。

具体的には、精神機能の障害により、業務遂行に必要な認知や判断、他者との意思疎通を適切に行うことが難しい状態を指します。

ただし、精神障害があるという理由だけで一律に登録できないわけではありません。

⑤試験に合格しても登録できないケース

上記で挙げた欠格事由のほかにも、登録が認められない場合があります。

例えば、過去に不正な手段を用いて宅建士の登録をしたことが発覚した場合や、宅建士として業務停止(事務禁止)の処分を受け、その期間がまだ終了していない場合などです。

また、宅地建物取引業者として不正行為を行い免許を取り消された法人の役員であった者も、取消しの日から5年間は登録できません。

宅建士になるまでの流れ

宅建士として不動産取引の現場で活躍するためには、試験合格後にいくつかの手続きを踏む必要があります。

単に試験に合格しただけでは、宅建士の独占業務である重要事項の説明などを行うことはできません。

宅建士になるまでの流れは次のとおりです。

  • 宅建試験に合格する
  • 実務経験2年以上または登録実務講習を修了する
  • 各都道府県で宅建士登録を行う

まず第一歩として、年に一度実施される宅建士試験に合格することが必須です。

合格後、都道府県知事に宅建士として登録を申請しますが、その際には原則として2年以上の実務経験が求められます。

実務経験がない場合は、国土交通大臣が認定する「登録実務講習」を受講し、修了することで実務経験の要件を満たすことが可能です。

これらの要件をクリアして登録申請を行い、登録が完了したら都道府県知事の指定する講習を受講し、最後に「宅建士証」の交付を申請します。

宅建士証を携帯して初めて、正式に宅建士として業務を開始することができるようになります。

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宅建士試験の概要!合格率や難易度も解説

宅建士試験は、毎年20万人以上が受験する国内でも最大規模の国家試験の一つです。

試験は年に1回、毎年10月の第3日曜日に全国一斉に実施されます。合格率は例年15%〜17%台で推移しており、決して簡単な試験ではありません。

試験の出題範囲は、民法などの「権利関係」、宅建業に関するルールの「宅建業法」、建築基準法などの「法令上の制限」、不動産関連の税制などを問う「税・その他」の4分野から構成されています。

合格するためには、十分な学習時間の確保と効率的な学習計画が不可欠です。

難易度は高いものの、出題される論点はある程度決まっているため、過去問を中心にしっかりと対策すれば、法律初学者でも合格を十分に目指せる資格です。

宅建士試験試験日と申し込みスケジュール

宅建士試験は、年に1回だけ、例年10月の第3日曜日に実施されます。

試験の申し込み期間は、毎年7月上旬から7月下旬までと比較的短いため、受験を決めたら早めに準備を始める必要があります。

申し込み方法は、インターネット経由・願書を郵送する方法の2種類です。

インターネット申し込みは期間が少し長めに設定されていますが、郵送の場合は願書の取り寄せから手続き完了まで時間もかかるため、締め切りには特に注意が必要です。

申し込みが完了すると、8月下旬ごろに試験会場などが記載された受験票が発送されます。

そして、10月の試験本番を経て、合格発表は例年11月下旬から12月上旬にかけて行われます。

試験内容と出題科目(民法・宅建業法など)

宅建士試験は、四肢択一のマークシート方式で、全50問が出題されます。試験時間は2時間です。

出題科目は大きく分けて次の4つの分野で構成されています。

  • 宅地建物取引業法
  • 権利関係
  • 法令上の制限
  • 税・その他

まず、最も出題数が多く、合格の鍵を握るのが「宅地建物取引業法」で20問出題されます。得点源となるため、満点を目指すつもりで学習することが大切です。

次に重要なのが、民法を中心とした「権利関係」で、14問出題されます。学習範囲が広く難解なテーマも含まれますが、基本的な論点を確実に押さえることが求められます。

続いて、都市計画法や建築基準法といった、建物を建てる際のルールなどを学ぶ「法令上の制限」が8問。

最後に、不動産取得税や固定資産税、不動産鑑定評価などに関する「税・その他」が8問出題されます。

宅建士試験の合格率と勉強時間の目安

宅建士試験の合格率は、過去10年間のデータを見ると、おおむね15%〜17%の間で推移しています。

受験者のうち6人〜7人に1人しか合格できない計算になり、比較的難易度が高い資格といえます。

合格基準点は毎年変動しますが、例年50問中34問〜38問程度の正解、つまり7割以上の得点が必要です。

合格するために必要とされる勉強時間は、個人の学習経験にもよりますが、一般的には300時間〜400時間程度が目安とされています。

例えば、1日2時間勉強する場合、約5ヶ月〜7ヶ月の準備期間が必要になる計算です。

法律の学習が初めての人は、より多くの時間を見積もっておくと安心です。計画的に学習を進め、特に過去問演習を繰り返し行うことが、この難関を突破するための最も有効な方法です。

宅建士試験は独学でも合格できる?

結論として、宅建士試験は独学でも十分に合格が可能です。実際に、毎年多くの合格者が独学で試験を突破しています。

独学の最大のメリットは、予備校や通信講座を利用する場合に比べて費用を大幅に抑えられる点です。

また、自分の生活スタイルに合わせて、好きな時間に好きな場所で学習を進められる自由度の高さも魅力です。

近年は、市販されているテキストや過去問題集のクオリティが非常に高く、わかりやすい解説動画もインターネットで手軽に視聴できるため、独学で学習する環境は十分に整っています。

自己管理能力と継続する意志が求められますが、それさえあれば独学での合格は決して遠い目標ではありません。

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宅建士は超簡単?宅建士と他の国家資格を比較

宅建士は「誰でも取れる簡単な資格」と言われることがありますが、合格率が15%前後である事実を見れば、それは誤解であることがわかります。

一方で、弁護士や司法書士のような超難関の法律系国家資格と比較すれば、挑戦しやすい資格であることも確かです。

宅建士の難易度を客観的に把握するために、他の人気国家資格と比較してみましょう。

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資格名合格率勉強時間の目安受験資格特徴
宅建士約17〜19%
(2024年度約18.6%)
約300~400時間なし・不動産の法律知識が問われる
・独占業務あり
FP3級約85%約80~150時間なし・お金に関する基礎知識
・2級へのステップ
介護福祉士約83%
(2024年度82.8%)
約250時間実務経験3年以上

実務者研修修了など
・介護分野唯一の国家資格
・筆記と実技試験あり
キャリアコンサルタント学科:約60%
実技:約67%
(2024年度)
約150時間
(講習除く)
養成講座修了など・学科と実技試験あり
・キャリア支援の専門家
第二種電気工事士学科:約58%
技能:約70%
(2024年度)
約150~250時間なし・筆記(学科)と技能(実技)試験あり
・実技の練習が必須
ITパスポート約50%約100~150時間なし・ITの基礎知識を証明
・CBT方式で随時受験可

例えば、ITパスポートやFP3級は合格率が約50%で、宅建士よりも基礎的な知識を問われるため、比較的取得しやすい資格です。

介護福祉士やキャリアコンサルタントは合格率自体は高いですが、受験するために実務経験や養成講座の修了が必要となります。

その点、宅建士は誰でも受験できる門戸の広さと、しっかり対策しなければ合格できない難易度のバランスが取れた資格といえます。

宅建士とFP2級と簿記2級はどれが難しい?

ビジネスパーソンに人気の資格である「宅建士」「FP2級」「日商簿記2級」は、それぞれ専門分野が異なり、難易度にも差があります。

一般的に、これら3つの資格の中で最も難易度が高いとされるのは宅建士です。

その理由は、合格率が15%〜17%と最も低く、民法をはじめとする法律の深い理解が求められるためです。暗記だけでなく、法律的な思考力も必要になります。

次に難しいとされるのが日商簿記2級で、合格率は20%前後で変動が大きく、商業簿記に加えて原価計算を含む工業簿記の知識が必須です。

計算の正確性とスピードが問われ、論理的な思考力が求められます。

3つのうちで最も合格しやすいのはFP2級で、合格率は40%前後と高めです。

ただし、金融、不動産、税金、相続など6分野にわたる広範な知識を網羅的に学習する必要があります。

まとめ

宅建士は宅地建物取引業法という国の法律に基づいた、信頼性の高い国家資格です。

名称が比較的新しいことや、試験・登録の窓口が国ではないことなどから誤解されがちですが、その価値が揺らぐことはありません。

宅建士には法律で定められた3つの独占業務があり、不動産業界ではなくてはならない存在です。

そのため、就職・転職に非常に強く、収入アップやキャリアの多様性にも繋がるなど、取得メリットは計り知れません。

合格率15%前後という数字が示す通り、決して簡単な試験ではありませんが、正しい手順で計画的に学習すれば、誰にでも合格のチャンスがあります。

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