「宅建試験に合格したけど、実務には使わない…」
「登録だけしておく意味はあるの?」
「登録費用はどのくらいかかるの?」
そんな疑問を持つ方も少なくないのではないでしょうか。
宅建士は試験合格後、登録を行うことで正式に「宅地建物取引士」として名乗れる資格です。
しかし、実際に仕事で使う予定がない方にとっては、登録だけしてメリットがあるのか、コストに見合うのかと迷うケースもあります。
この記事では、宅建を登録だけしておくメリットや注意点、登録にかかる費用についてわかりやすく解説します。宅建士資格の活かし方を考えるうえでの参考にしてください。
宅建試験合格後に登録は必要?取引士証を発行しない選択もある
宅建士(宅地建物取引士)の独占業務である重要事項の説明や契約書への記名を行うには、取引士証の交付を受ける必要があります。
取引士証は、宅建試験の合格後に都道府県知事への登録手続きを完了した後に交付申請が必要です。
したがって、不動産業界で宅建士として働く場合は登録・交付が必須です。
また、宅建士と名乗って業務を行ったり、転職活動で宅建士をアピールしたりする場合も登録・交付が求められます。
なお、「宅建試験合格者」としてアピールするだけであれば登録は必要ありません。
一方で、現時点で独占業務を行う予定がない場合、登録だけを済ませておき、取引士証は発行しないという選択も可能です。
自身のキャリアプランに合わせて、登録のタイミングを検討することが重要になります。
登録だけしておくメリット
宅建士の登録だけしておくメリットには以下があります。
- 登録手続きにかかる時間と手間を事前に済ませられる
- 転職や就職で即戦力として評価される
- 取引士証を交付していなければ5年更新は不要
宅建士に登録しておくと、登録手続きにかかる時間と手間を事前に完了しておけるのがメリットです。
登録申請には通常1〜2ヶ月かかりますが、事前に登録しておけば、例えば急に不動産業界への転職が決まった際など、企業が求めるタイミングでスムーズに宅建士として活躍することが可能です。
転職活動中、採用担当者から見れば宅建士の応募者は入社後の手続きが迅速に進むため、計画性があり即戦力になり得ると高く評価されます。
また、取引士証(宅地建物取引士証)は5年ごとに更新が必要ですが、登録だけして取引士証の交付をしなければ更新の手間もかかりません。
登録だけしておくデメリット
宅建士の登録だけしておくデメリットは次のとおりです。
- 登録手数料がかかる
- 自己管理の手間が増える
- 取引士証を交付した場合は5年ごとの更新が必要
まず、宅建の登録手続き自体に登録手数料として37,000円(東京の場合)の費用が発生します。
すぐに宅建士として働く予定がなければ、登録費用が無駄な負担に感じるかもしれません。
また、登録を維持するためには自己管理が必要なのもデメリットのひとつです。
例えば、氏名や住所、本籍、勤務先などに変更が生じた場合、法律に基づき遅滞なく変更の登録申請を行う義務があります。
そのほか、取引士証は5年ごとに更新が必要であり、その案内は登録された住所に送付されます。
住所変更の届出を忘れていると、更新の案内が届かず、気づかないうちに有効期限が切れてしまうリスクも考えられます。
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宅建士登録の条件とは?2年以上の実務経験がある場合
宅建試験に合格した人が宅建士として登録するためには、大きく分けて以下2つの条件を満たす必要があります。
- 宅建試験に合格していること
- 2年以上の実務経験を有していること
2年以上の実務経験とは、宅地建物の取引に関する実務を指します。
具体的に言えば、顧客への物件説明、物件調査、契約書の作成補助といった業務が該当します。
単に不動産会社の一般事務や経理、受付業務などに従事していただけでは、実務経験として認められないケースが多いため注意が必要です。
2年以上の実務経験がある場合は、その旨を証明する書類を提出することで、登録実務講習を受けることなく登録申請に進むことができます。
実務経験がない場合は登録実務講習を修了する
宅建試験に合格しても、宅地建物取引に関する実務経験が2年に満たない場合、通常はそのまま宅建士登録を行うことはできません。
しかし、その代替措置として「登録実務講習」が設けられています。
登録実務講習は、国土交通大臣の登録を受けた機関が実施するもので、修了することで2年以上の実務経験を有する者と同等とみなされます。
講習のカリキュラムは、通信講座による自宅学習と1〜2日程度のスクーリング(対面またはオンラインでの演習)で構成されるのが一般的です。
講習の最後には修了試験が実施され、合格すると「登録実務講習修了証」が交付されます。修了証の有効期間は10年間です。
不動産業界での実務経験がない学生や他業種からの転職を考えている人でも、講習を修了すれば宅建士登録の要件を満たすことができます。

登録に必要な書類は?登録できないケースも解説
宅建士の登録申請には、以下の書類を揃える必要があります。
- 登録申請書
- 誓約書
- 身分証明書(本籍地の市区町村が発行するもの)
- 登記されていないことの証明書(法務局が発行するもの)
- 住民票の抄本
- 合格証書(原本とコピーの両方)
- 顔写真
- 実務経験証明書(実務経験が2年以上の方)
- 従業者名簿のコピー(実務経験が2年以上の方)
- 登録実務講習の修了証(実務経験が2年未満の方)
その他、本人確認書類や登録手数料、未成年の方は法定代理人の許可書などが必要です。
また、法律で定められた「欠格要件」に該当する場合は宅建士に登録できないため注意しましょう。
例えば、成年被後見人や被保佐人、破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者、宅地建物取引業法違反などで罰金刑に処せられ5年を経過しない者、禁錮以上の刑に処せられその執行が終わってから5年を経過しない者などが該当します。
申請前に、自分が欠格要件に当てはまらないかを必ず確認しておくことが重要です。
宅建士登録から取引士証交付までの流れ
宅建試験に合格してから、宅建士として業務を開始するまでには、いくつかの手続きを段階的に進める必要があります。
主な流れは次のとおりです。
- 登録実務講習を受講する(2年以上の実務経験がない人)
- 宅建士登録申請する
- 取引士証交付申請する
それぞれ順を追って解説します。
手順①登録実務講習を受講する(2年以上の実務経験がない人)
宅建士登録の条件である2年以上の実務経験がない人は、まず登録実務講習を受講・修了する必要があります。
講習は国土交通大臣の登録を受けた複数の機関で実施されており、インターネットなどで申し込みが可能です。
申し込みを済ませると教材が送られてくるので、約1ヶ月間の通信講座で自己学習を進め、その後、指定された会場またはオンラインで1〜2日間のスクーリングに参加し、講師から実務に関する演習指導を受けます。
講習の最後には修了試験があり、これに合格すると「登録実務講習修了証」が交付されます。
修了証の有効期間は10年間ですので、合格後すぐに登録申請をしない場合でも、先に講習だけ受けておくことも可能です。
手順②宅建士登録申請する
2年以上の実務経験がある人、または登録実務講習を修了した人は、宅建士の登録申請手続きに進むことができます。
申請先は、宅建試験を受験した都道府県の担当窓口(例:東京都都市整備局、大阪府建築振興課など)です。
必要書類を不備なく揃え、登録手数料(東京は37,000円)を納付して申請します。申請書類は都道府県のWebサイトからダウンロードできる場合が多いです。
提出後、欠格要件に該当しないかなどの審査が行われ、登録が完了するまでには通常1〜2ヶ月程度の期間を要します。
書類に不備があるとさらに時間がかかるため、提出前に入念な確認が不可欠です。
登録が完了すると、ハガキなどで通知が届きます。
手順③取引士証交付申請する
宅建士登録が完了しただけでは、まだ宅建士として業務を行うことはできません。
宅建士として独占業務を行うには、取引士証の交付を受ける必要があるため、登録完了の通知を受け取ったら次に取引士証の交付申請を行います。
申請先は、登録申請と同じく登録している都道府県の窓口です。
交付申請には、交付申請書、顔写真のほか、交付手数料(4,500円)が必要です。
ただし、宅建試験合格日から1年を超えて交付申請をする場合、事前に法定講習を受講しなければならない点に注意しましょう。
法定講習は、最新の法令改正や実務上の注意点を学ぶための講習で、合格後1年以内に申請すれば、この法定講習は免除されます。
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宅建士の登録にかかる費用と維持コスト
宅建士の資格を維持するためには、初期費用だけでなく定期的な維持コストも発生します。主な費用は次のとおりです。
- 登録実務講習(実務経験が2年未満の場合):約20,000円
- 宅建士の登録手数料:37,000円(東京の場合)
- 取引士証の交付手数料:4,500円
- 取引士証の5年ごとの更新:16,500円(法定講習12,000円、交付手数料4,500円
宅建士の登録には、実務講習から交付を受けるまでの初期費用として約6万円かかります。
さらに、取引士証は5年ごとに更新が必要であり、その際には法定講習の受講が義務付けられているため、法定講習受講料と交付手数料の合計16,500円がかかります。
これらのコストを理解した上で、登録や更新の計画を立てることが重要です。
宅建士の登録だけしておいたほうがいい人
以下に当てはまる人は、宅建士の登録・交付まで済ませておくことをおすすめします。
- 就職・転職活動で宅建資格を活かしたい人
- 将来的に独立・開業を考えている人
- 宅建業界にいつでも復帰できる状態を保ちたい人
それぞれ詳しく解説します。
①就職・転職活動で宅建資格を活かしたい人
不動産業界への就職や転職を考えている人にとって、宅建士の登録は強力なアピール材料となります。
採用企業の視点から見ると、単に「宅建試験合格者」である応募者よりも、「宅建士登録済み」の応募者の方が魅力的です。
登録が完了していれば、入社後すぐに取引士証の交付申請手続きを進めることができ、より早く専任の宅建士として実務に就かせることができるためです。
さらに、不動産業界で働く意欲の高さや計画性を示すことができ、特に未経験からのチャレンジの場合、他の応募者との明確な差別化を図る上で有利に働くでしょう。
②将来的に独立・開業を考えている人
将来、不動産会社を設立して独立・開業を目指している人にも宅建士に登録しておくことをおすすめします。
宅地建物取引業法では、不動産会社は事務所ごとに従業員5名につき1名以上の割合で、専任の宅建士を設置することが義務付けられています。
自身が宅建士として登録していれば、この設置義務をクリアできるため、開業のハードルを下げることが可能です。
独立のタイミングは、市況や自己資金、人脈など様々な要因によって左右されるため、いつチャンスが訪れるか予測しにくいものです。
そのため、事前に登録だけでも済ませておけば、いざという時にスムーズに行動を開始できます。
③宅建業界にいつでも復帰できる状態を保ちたい人
出産や育児、介護、あるいは他業種への転職など、さまざまな理由で一時的に不動産業界を離れる人もいるでしょう。
そのような場合でも、将来的に業界へ復帰する可能性を少しでも考えているのであれば、宅建士の登録を維持しておくことには大きな価値があります。
登録を抹消してしまうと、再度登録する際に改めて申請手続きや費用の支払いが必要となり手間がかかります。
登録を維持しておけば、ブランク期間があったとしても宅建士という資格保有者であることに変わりはありません。
再就職活動を行う際に、資格が有効な状態であることは大きなアドバンテージです。
企業側もすぐにでも宅建士として活躍できる人材を求める傾向が強いため、いつでも業界に戻れるという安心感を持つためにも、登録を維持しておくことは賢明な選択といえるでしょう。
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宅建士の登録をするときの注意点
宅建士の登録をするときの注意点は次のとおりです。
- 登録から完了まで1〜2ヶ月かかる
- 取引士証は5年ごとに更新が必要
- 勤務先がなくても登録自体はできる
- 登録実務講習と法定講習の違い
それぞれ詳しく解説します。
①登録から完了まで1〜2ヶ月かかる
宅建士の登録申請は、書類を提出すれば即日で完了するものではありません。
申請書類を都道府県の担当窓口に提出した後、申請者に欠格要件がないかなどを審査する期間が必要です。
この審査期間は自治体によって多少異なりますが、一般的には申請から登録完了の通知が届くまで、およそ1〜2ヶ月程度かかります。
特に、1月の宅建試験合格発表後や年度末などは申請が集中し、通常よりも時間がかかる傾向があります。
もし、転職先の入社日までに取引士証を必要とするなど、登録を急ぐ事情がある場合は、できる限り早く申請手続きを開始することが大切です。
また、書類に不備があった場合は差し戻され、さらに時間が経過してしまうため、提出前の入念なチェックも忘れてはなりません。
余裕を持ったスケジュールで手続きを進めましょう。
②取引士証は5年ごとに更新が必要
取引士証には5年間の有効期間が定められており、引き続き宅建士として業務を行う場合は、期間満了前に更新手続きを行う必要があります。
有効期間が満了すると取引士証は失効し、重要事項の説明などの独占業務は一切行えません。
通常、更新手続きは有効期間が満了する6ヶ月前から行うことができ、更新時期が近づくと登録している住所宛に更新案内の通知が届きます。
しかし、引っ越しなどで住所が変更になった際に変更登録の届出を怠っていると、案内が届かない可能性があるため注意が必要です。
また、更新するためには、都道府県知事が指定する団体が実施する「法定講習」の受講が必要です。
③勤務先がなくても登録自体はできる
宅建士の登録申請を行うにあたり、不動産会社などに勤務している必要はありません。
登録の要件は、あくまで以下の2つです。
- 宅建試験に合格していること
- 2年以上の実務経験がある(または登録実務講習を修了している)こと
そのため、学生や主婦、他業種で働いている人でも、要件を満たしていれば登録手続きを行うことが可能です。
将来的に不動産業界で働くことを見据えて、先に登録だけを済ませておくという選択ができます。
ただし、登録事項には勤務先の情報も含まれるため、登録後に就職したり勤務先が変わったりした場合は、遅滞なく変更の登録申請を行う義務が生じます。
④登録実務講習と法定講習の違い
宅建士に関連する講習には、名称が似ている「登録実務講習」と「法定講習」があり、両者の違いを正確に理解しておくことが重要です。
登録実務講習は、宅建試験に合格したものの2年以上の実務経験がない人が、宅建士の登録をするために受講する講習です。
講習を修了することで、実務経験要件を満たすことができます。
一方、法定講習は、すでに宅建士登録を終えた人が、取引士証の交付・更新を受けるために受講する講習です。
最新の法令改正や実務知識を学ぶことを目的としており、5年ごとの更新時には必ず受講が義務付けられます。
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宅建士の登録に関するよくある質問
Q.宅建試験に合格しただけで宅建士になれる?
宅建試験に合格しただけでは、宅建士になることはできません。
試験合格は、あくまで宅建士になるための資格要件の一つを満たした段階です。
正式に宅地建物取引士(宅建士)と名乗り、重要事項の説明や契約書への記名といった独占業務を行うためには、試験に合格した後、受験した都道府県知事への登録申請を行い、登録を完了させる必要があります。
さらに、そのうえで取引士証の交付を受けて、初めて法律上の宅建士として活動することができます。
Q.宅建士の登録だけして取引士証の交付はしなくてもいい?
宅建士の登録だけして、取引士証の交付はしなくても問題ありません。
宅建士の登録と取引士証の交付は、それぞれ独立した手続きです。
そのため、宅建試験に合格し、実務経験などの要件を満たした後に、まず登録だけを済ませておくという選択は可能です。
すぐに宅建士として実務を行う予定がない場合は、登録だけを完了させ、取引士証の交付申請は必要になったタイミングで行うという人も少なくありません。
Q.登録だけして放置するとどうなる?
登録だけして放置しても、登録情報が抹消されるわけではないため大きな問題はありません。
しかし、完全に放置するのは避けるべきです。
宅建士としての登録の効力自体がすぐに失われるわけではありませんが、登録者には法律上の義務が発生します。
具体的には、氏名、住所、本籍、勤務先の不動産会社などに変更があった場合、遅滞なく都道府県に変更の登録を申請する義務があります。
仮に住所変更の届出を忘れていると、5年ごとの取引士証更新時期に案内が届かず、更新手続きを失念してしまうリスクが高まります。
そのため、登録後も放置せずに登録情報を最新の状態に保ちましょう。
Q.登録しないと資格は無効になる?
宅建士試験に合格後、登録をしなくても宅建試験の合格実績が無効になることはありません。
宅建試験の合格は生涯有効です。
したがって、試験に合格してから何年経過していても、宅建士として登録する権利が失われることはありません。
例えば、合格後10年経ってから不動産業界で働くことになった場合でも、その時点で登録実務講習(実務経験がない場合)を受講し、登録申請を行うことが可能です。
まとめ
宅建試験に合格した後、登録だけを済ませておく選択は可能です。
宅建士として重要事項の説明などの独占業務を行うには、登録と取引士証の交付が不可欠ですが、すぐに業務に就かない場合でも、登録を完了させておくことにはメリットがあります。
特に、不動産業界への就職・転職活動を有利に進めたい人や、将来の独立開業を視野に入れている人にとって、登録済みというステータスは大きな強みになるでしょう。
ただし、登録には費用がかかるほか、住所変更などの届出義務といった維持管理の手間も発生する点に注意が必要です。
これらのメリットとデメリットを総合的に比較したうえで、自身の状況に合わせて登録のタイミングを判断することが重要です。
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