宅建士はやめとけ？その理由と目指すべき理由、メリット・デメリットを解説

「宅建士は“やめとけ”って聞いたけど本当？」
「資格を取っても意味がないって言われる理由は？」
「実際のところ、宅建士を目指す価値はあるの？」

そんな疑問を感じている方も多いのではないでしょうか。

宅建士（宅地建物取引士）は不動産業界で定番の国家資格ですが、SNSなどでは「取っても意味がない」「仕事が大変」といった声も見られます。

しかし一方で、キャリアアップや独立に役立つなど、実際には多くのメリットも存在します。

大切なのは、「やめとけ」と言われる理由を正しく理解したうえで、自分に合った目標を立てることです。

この記事では、「宅建士はやめとけ」と言われる理由から、資格を目指すべき理由、さらに宅建士のメリット・デメリットまで詳しく解説します。これから資格取得を検討している方は、ぜひ最後までご覧ください。

宅建士（宅地建物取引士）はやめとけと言われる5つの理由

宅建士（宅地建物取引士）はやめとけと言われる主な理由として以下が考えられます。

それぞれ詳しく解説します。

理由①資格取得の難易度が高く、合格まで時間がかかる

宅地建物取引士の資格が「やめとけ」と言われる一つ目の理由は、試験の難易度の高さにあります。

宅建士試験の合格率は例年15%〜17%程度で推移しており、誰でも簡単に取得できる資格ではありません。

合格するためには、一般的に300時間〜400時間程度の勉強が必要とされています。

社会人が働きながら学習時間を確保するのは容易ではなく、計画的な自己管理が求められます。

さらに、法律に関する専門的な知識が問われるため、初学者にとっては理解に時間がかかる部分も多いでしょう。

一度の受験で合格できず、数年にわたって挑戦を続ける人も少なくありません。

長期間にわたる勉強の末に合格しても、すぐに大きなリターンがあるとは限らないため、費やした時間と労力に対して見返りが少ないと感じ、途中で挫折してしまうケースがあります。

理由②不動産業界の仕事が体力的・精神的にハード

不動産業界の仕事特有の厳しさも、「やめとけ」と言われる大きな要因です。

特に営業職の場合、顧客の都合に合わせて動くことが基本となります。

そのため、勤務時間は不規則になりがちで、土日祝日が主な勤務日となることがほとんどです。

平日に休みが取れるメリットはありますが、家族や友人との時間を合わせにくいほか、仕事は物件の案内や契約手続きで外出する機会が多く、一日中移動し続けることも珍しくありません。

夏場の暑い日や冬の寒い日でも外回りが必要なため、体力的な負担は大きくなります。

さらに、高額な商品を扱う仕事であるため、顧客からのクレーム対応や契約に関するトラブルなど、精神的なプレッシャーにさらされる場面も少なくありません。

理由③営業ノルマや人間関係にストレスを感じやすい

不動産業界、特に売買仲介や賃貸仲介の分野では、厳しい営業ノルマが課されることが一般的です。

多くの企業で成果主義が採用されており、個人の営業成績が給与や評価に直接反映されます。

毎月の目標達成に向けて常にプレッシャーを感じ続けるため、精神的に疲弊してしまう人も少なくありません。

成果が上がらない時期には上司から厳しい指導を受けたり、社内で肩身の狭い思いをしたりすることもあります。

また、顧客との関係構築も重要ですが、時には無理な要求をされたり契約直前でキャンセルされたりするなど、一筋縄ではいかない場面も多いです。

社内では同僚がライバルになることもあり、競争の激しい環境が人間関係のストレスにつながることも、宅建士の仕事が敬遠される一因となっています。

理由④資格を取っても必ず収入や評価に直結するわけではない

宅建士の資格を取得すれば、必ずしも高い収入や評価が保証されるわけではない点も、「やめとけ」と言われる理由の一つです。

多くの不動産会社では、資格手当として月に1万円〜3万円程度が支給されます。

しかし、年収を大きく左右するのは、資格の有無よりも個人の営業成績であることがほとんどです。

特に歩合給の割合が大きい会社では、契約を成立させなければ収入は伸び悩みます。

資格は不動産取引の専門家である証明にはなりますが、顧客を見つけ、信頼関係を築き、契約に結びつける営業スキルとは別の能力です。

資格を持っているだけで仕事がうまくいくわけではなく、入社後に実務能力を磨かなければなりません。

そのため、資格取得にかけた労力に見合うほどの収入アップを実感できず、ギャップを感じる人もいます。

理由⑤資格保有者が多く、希少価値が低くなっている

宅建士は人気のある国家資格であり、資格保有者が非常に多いという現実も無視できません。

宅地建物取引士の登録者数は全国で110万人を超えており、毎年多くの新しい合格者が誕生しています。
（参考：令和3年度宅地建物取引業法の施行状況調査結果について 表-3 宅地建物取引士登録者数の推移｜国土交通省）

不動産業界では、宅建士資格を持っていることが特別なスキルというよりも、むしろ標準的な要件と見なされる傾向があります。

そのため、資格を持っているだけでは他の候補者との差別化が難しく、希少価値が高いとは言えません。

就職や転職の際に有利に働くことは間違いありませんが、それだけで有利な条件を引き出せるわけではないのです。

他のスキル、例えば高い営業力、語学力、ファイナンシャルプランナーなどの関連資格を組み合わせなければ、市場価値を高めることは難しいでしょう。

宅建士はオワコン？やめとけと言われても目指す価値がある理由

「宅建士はやめとけ」という意見がある一方で、資格がもつ価値や将来性は決して低くありません。

具体的な理由には以下があります。

それぞれ詳しく解説します。

理由①独占業務があり、法的に需要がある資格である

宅建士が将来も安定して求められる最大の理由は、法律で定められた独占業務が存在する点です。具体的な独占業務は次の3つです。

宅建士は、不動産契約前に重要事項の説明を行うほか、説明内容を記載した35条書面への記名、および37条書面への記名が独占業務として定められています。

不動産の売買や賃貸借といった取引がある限り、これらの業務は必ず発生します。

また、宅地建物取引業法では、不動産会社の各事務所に従業員5人につき1人以上の割合で専任の宅建士を設置することが義務です。

そのため、企業は常に一定数の宅建士を確保する必要があり、資格保有者に対する求人は安定しています。

理由②衣食住の「住」を支える仕事で、社会的な意義が高い

宅建士の仕事は、人々の生活の三大要素である「衣食住」のうち、「住」という非常に重要な部分を支える役割を担っています。

住宅の購入や売却、賃貸は、多くの人にとって人生で何度も経験するものではなく、非常に大きな決断が伴うイベントです。

そのような人生の節目において、専門家として顧客に寄り添い、法律や不動産の知識を活かして不安を解消し、最適な選択をサポートできることは大きなやりがいにつながります。

顧客から「あなたに任せてよかった」と感謝の言葉をかけられたときには、何物にも代えがたい喜びを感じるでしょう。

単に物件を売買するだけでなく、顧客の新しい生活のスタートを支えるという社会的な意義の高さは、宅建士という仕事の大きな魅力の一つです。

理由③不動産業界以外の分野でも活かしやすい

宅建士の資格で得られる法律や税金に関する知識は、不動産業界以外でも高く評価されます。

例えば、金融機関では住宅ローン審査や不動産担保評価の業務で宅建士の知識が直接役立ちます。

建設会社やハウスメーカーでは、自社で建築した物件を販売する際に宅建士が不可欠です。

また、一般企業の総務部や管財部では、社有不動産の管理や社員の社宅手配、店舗開発といった業務で専門知識を活かすことができます。

不動産管理会社や信託銀行など、活躍の場は多岐にわたるため、宅建士資格は不動産業界への入り口となるだけでなく、多様な業界へのキャリアチェンジやキャリアアップにつながる汎用性の高い資格であると言えます。

理由④AIや自動化では代替しづらい

近年、AI技術の発展により多くの仕事が自動化される可能性が指摘されていますが、宅建士の業務はAIに代替されにくいと考えられています。

確かに、物件情報の検索や契約書の雛形作成といった定型的な作業は、AIによって効率化が進むでしょう。

しかし、宅建士の仕事の本質は、専門知識を基にした顧客への個別具体的な提案や、複雑な権利関係の調整、価格交渉など、高いコミュニケーション能力と判断力が求められる部分にあります。

顧客一人ひとりの事情や希望を丁寧にヒアリングし、信頼関係を築きながら最適な解決策を導き出すプロセスは、現在のAI技術では代替が困難です。

最終的な意思決定をサポートする人間ならではの役割は、今後も重要であり続けるでしょう。

宅建士として後悔しないための考え方と対策

宅建士の資格を取得した後に「やめておけばよかった」と後悔しないために、大切な考え方と対策に次の4つがあります。

それぞれ詳しく解説します。

①自分のキャリア目標を明確にしておく

宅建士資格を取得した後に後悔しないために最も重要なのは、資格取得後のキャリア目標を具体的に描いておくことです。

なぜ宅建士になりたいのか、資格をどのように活かしたいのかを自問自答してみましょう。

例えば、

• 営業職として高収入を目指したい
• ワークライフバランスを重視して事務職として安定して働きたい
• 専門知識を深めて不動産管理のプロになりたい
• 将来は独立開業したい

など、目標は人それぞれです。

自分の目標が明確であれば、就職や転職活動の際に企業選びの軸が定まり、ミスマッチを防ぐことができます。

資格はあくまで目標を達成するためのツールの一つで、取得すること自体を目的とせず、その先のキャリアプランを考えておくことが、有意義な資格活用への第一歩となります。

②労働環境のいい企業を選ぶ

不動産業界は「ブラック」というイメージを持たれがちですが、すべての企業がそうであるわけではありません。

企業によって企業文化、働き方、評価制度は大きく異なります。

後悔しないためには、業界のイメージだけで判断せず、一社一社の労働環境を丁寧に見極めることが重要です。

売買仲介、賃貸仲介、不動産管理、デベロッパーなど、業態によっても働き方は大きく変わります。

例えば、個人の成果を重視する歩合給中心の会社もあれば、チームで目標を追い、固定給の割合が高い安定志向の会社もあります。

企業の口コミサイトや転職エージェントからの情報を活用し、残業時間の実態や休日取得の状況、社内の雰囲気などを事前にリサーチしましょう。

自分自身の価値観や働き方の希望に合った企業を選ぶことが、長く働き続けるための鍵となります。

③営業が苦手なら事務・管理系の役割も検討する

宅建士の仕事は営業だけではありません。

もし営業職に苦手意識があるなら、事務職や管理職といった他の役割を検討することも有効な対策です。

例えば、宅建事務と呼ばれる職種では、店舗のバックオフィスで契約書類の作成や重要事項説明書の準備、電話応対などを担当します。

営業担当者のサポート役として、専門知識を活かしながら安定した環境で働くことが可能です。

また、不動産管理会社では、オーナーに代わって物件の維持管理や入居者対応、家賃管理などを行うプロパティマネジメントの仕事があります。

こちらは長期的な視点で物件の価値を維持・向上させる役割であり、営業とは異なるスキルが求められます。

自分の適性や興味に合わせて職種を選択できることも、宅建士資格の魅力の一つです。

④宅建士以外の資格と組み合わせて強みを作る

資格保有者が多い宅建士は、単体では大きな差別化が難しい場合があります。

そこで有効なのが、他の資格と組み合わせて自身の専門性や市場価値を高める「ダブルライセンス」です。

例えば、お金の専門家であるファイナンシャルプランナー（FP）の資格を併せ持てば、顧客に対して物件の提案だけでなく、住宅ローンやライフプランニングを含めた総合的な資金計画のアドバイスができます。

また、マンション管理の専門家であるマンション管理士や管理業務主任者の資格があれば、不動産管理分野でのキャリアアップに非常に有利です。

そのほか、法律の専門知識を深める行政書士や、語学力を証明するスコアTOEICなども、組み合わせることで独自の強みとなり、キャリアの選択肢を大きく広げることができます。

宅建士資格を取得するメリット

宅建士資格を取得するメリットは、主に以下です。

それぞれ詳しく解説します。

メリット①就職・転職での評価が高まる

宅建士資格は、不動産業界への就職や転職において非常に強力な武器となります。

多くの不動産会社では、求人の応募条件として宅建士資格を必須、または歓迎要件として挙げています。

資格を持っていることで、不動産取引に関する基礎的な法律知識を有していること、そして業界で働く意欲が高いことの客観的な証明になるためです。

未経験者であっても採用選考で有利に働き、キャリアチェンジのハードルを下げてくれるでしょう。

特に、不動産会社の事務所には従業員5人につき1人以上の専任宅建士を置く義務があるため、資格保有者は常に一定の需要があります。

メリット②年収・昇進・信頼面でプラスに働く

宅建士資格を取得すると、毎月1万円〜3万円程度の資格手当が支給される企業は少なくありません。

基本給に上乗せされる形で支給されるため、安定した収入アップが見込めます。

また、企業によっては、係長や課長といった管理職への昇進要件として宅建士資格の保有を定めている場合があります。

キャリアアップを目指す上で、資格が必須のパスポートとなるケースも少なくありません。

さらに、顧客との関係においても、宅建士という国家資格を持っていることは大きな信頼につながります。

専門家としてのアドバイスに説得力が増し、高額な不動産取引を安心して任せてもらいやすくなるため、営業成績の向上にも間接的に貢献するでしょう。

メリット③副業や独立の選択肢が広がる

宅建士資格は、本業以外での収入源を確保するための副業や、将来的な独立開業といった多様な働き方を可能にします。

例えば、不動産に関する専門知識を活かして、ウェブメディアで記事を執筆するライターとして活動したり、自身のブログやSNSで不動産投資に関する情報を発信したりすることが可能です。

また、不動産関連のセミナーで講師を務める道もあります。

さらに、宅地建物取引業に関する実務経験を積むことで、自分自身で不動産会社を設立し、独立開業することも夢ではありません。

会社員という枠にとらわれず、自分の裁量でキャリアを切り拓いていける可能性が広がることは、宅建士資格がもたらす大きな魅力です。

宅建士資格を取得するデメリット

宅建士資格を取得するデメリットとして、主に次の2つがあげられます。

それぞれ詳しく解説します。

デメリット①業界環境が厳しく離職率も高い

宅建士が活躍する不動産業界、特に営業職は、依然として厳しい労働環境にあることがデメリットとして挙げられます。

多くの企業では個人の営業成績が重視され、毎月のノルマ達成に対するプレッシャーは非常に大きいです。

成果が上がらなければ収入が不安定になるだけでなく、社内での立場も厳しくなる可能性があります。

また、顧客の都合に合わせて週末や夜間に対応することも多く、プライベートの時間を確保しにくいと感じる人もいます。

こうした成果主義の文化や不規則な勤務形態が合わず、心身ともに疲弊してしまい、残念ながら早期に離職してしまうケースは少なくありません。

高い定着率を誇る企業も増えてはいますが、業界全体としては依然として人の入れ替わりが激しい傾向にあります。

デメリット②営業成果が資格に比例しない

宅建士の資格は、不動産取引の法律的な専門知識を持っていることを証明しますが、営業としての成功を保証するものではありません。

資格を持っていることと、実際に契約を獲得できる営業力は全く別のスキルです。

現場では、顧客とのコミュニケーション能力、課題をヒアリングする力、信頼関係を築く人間性、そして粘り強い交渉力などが成果を大きく左右します。

そのため、試験勉強で得た知識を実務でどのように活かすかという応用力が問われます。

資格を持っているにもかかわらず、営業成績が振るわずに収入が伸び悩むというケースは珍しくありません。

資格はあくまでスタートラインに立つための切符であり、入社後に個人の努力で営業スキルを磨き続けなければ、安定した成果を出すことは難しいでしょう。

宅建士に関するよくある質問

まとめ

「宅建士はやめとけ」という意見には、資格取得の難易度、不動産業界の厳しい労働環境、営業ノルマのプレッシャーといった根拠があります。

資格保有者が多く、持っているだけでは大きな差別化にならないという現実も存在します。

しかし、宅建士には法律で定められた独占業務があり、社会のインフラである「住」を支える重要な役割を担うため、その需要は安定しています。

大切なのは、資格取得をゴールにせず、取得後に自分がどうなりたいかというキャリア目標を明確にすることです。

資格はあくまでキャリアを築くための武器であり、それをどう活かすかが最も重要です。