「予備試験はやめとけって言われたけど、そんなに厳しいの?」
「難易度が高すぎて合格できないのでは…?」
「それでも法科大学院より予備試験ルートがいいって本当?」
そんな不安や疑問を抱えている方も多いのではないでしょうか。
予備試験は、司法試験の受験資格を得るためのルートのひとつであり、学歴に関係なく挑戦できる反面、その難易度は非常に高く、合格率は毎年わずか数%という狭き門です。
だからこそ「やめとけ」と言われることもありますが、一方で最短ルートとして高い人気を誇っているのも事実です。
大切なのは、自分にとってどのルートが適しているかを正しく見極めることです。
この記事では、予備試験が「やめとけ」と言われる理由や難易度の高さを解説しつつ、予備試験ルートが向いている人の特徴についても詳しく紹介します。ぜひ最後までご覧ください。
予備試験はやめとけと言われる理由
予備試験はやめとけと言われる理由には、主に次の3つがあります。
- 試験の難易度が非常に高いため
- 合格までに多くの時間や費用がかかるため
- 法科大学院進学でも司法試験の受験資格を得られるため
それぞれ詳しく解説します。
理由①試験の難易度が非常に高いため
予備試験を避けるべきだと言われる最大の理由は、その極めて高い難易度にあります。
合格率は例年3〜4%程度を推移しており、司法試験本体の合格率よりも低いです。それぞれの過去の合格率は次のとおりです。
| 年度 | 予備試験 | 司法試験 |
|---|---|---|
| 2024年 | 3.6% | 42.1% |
| 2023年 | 3.6% | 45.3% |
| 2022年 | 3.6% | 45.5% |
| 2021年 | 4.0% | 41.5% |
| 2020年 | 4.2% | 39.2% |
| 2019年 | 4.0% | 33.6% |
| 2018年 | 3.9% | 29.1% |
| 2017年 | 4.1% | 25.9% |
| 2016年 | 3.9% | 22.9% |
| 2015年 | 3.8% | 23.1% |
参照:司法試験予備試験の結果について|法務省
参照:(2)司法試験の合格状況|弁護士連合会
予備試験には、現役の大学生や法科大学院生、働きながら合格を目指す社会人など、既に高い法律知識を持つ優秀な層が集まります。
その中で合格できるのは、ほんの一握りのトップ層だけであり、単に法律知識を暗記しているだけでは通用せず、複雑な事案を分析し、論理的な文章を構築する高度な能力が求められます。
合格率の数字だけを見ると、予備試験のほうが合格率が圧倒的に低く、予備試験が著しく難しいように見えてしまいます。
しかし、予備試験には受験資格がなく誰でも受けられるため、母数が多いことから、全体の合格者の割合が低く見えてしまうことが原因です。
そのため、予備試験が難しいのは事実ですが、司法試験と比べてさらに難しいというわけではありません。
理由②合格までに多くの時間や費用がかかるため
予備試験合格には、膨大な時間と多額の費用が必要となる点も、「やめとけ」と言われる理由の一つです。
法律初学者が合格レベルに達するには、一般的に5,000〜8,000時間もの勉強が必要とされています。
学生や社会人が日々の生活と両立しながらこれだけの時間を確保するのは、並大抵の努力ではありません。
数年単位での挑戦が前提となり、長期的なモチベーション維持が非常に困難です。
また、効率的な学習のために多くの受験生が予備校を利用しますが、その費用は数十万円から百万円以上になることも珍しくありません。
時間的、金銭的な負担の大きさから、気軽に挑戦できる試験ではなく、相応の覚悟がなければ途中で断念せざるを得ない人もいるのは事実です。
理由③法科大学院進学でも司法試験の受験資格を得られるため
司法試験の受験資格を得る方法は、予備試験ルートだけではありません。
法科大学院を修了するという、より確立されたルートが存在することも、「予備試験はやめとけ」と言われる一因です。
法科大学院では、2年間または3年間かけて、教授陣から体系的な法律教育を受けることができます。
同じ目標を持つ仲間と切磋琢磨しながら学べる環境は、孤独になりがちな受験勉強において大きな支えとなるでしょう。
わざわざ合格率の低い予備試験という茨の道を選ばなくても、着実にステップを踏んで法曹を目指せる道が用意されています。
そのため、予備試験に固執せず、法科大学院への進学を検討する方が現実的だと考える人が多いのです。

予備試験は難しくて無理ゲー?難易度が高い理由
予備試験が「無理ゲー」とまで言われるのは、単に合格率が低いからだけではありません。
試験制度自体が、受験生に大きな負担を強いる構造になっています。難易度が高い理由は大きく次の2つです。
- 試験が短答式、論文式、口述式の3段階もある
- 試験範囲が広い
それぞれ詳しく解説します。

試験が短答式、論文式、口述式の3段階もある
予備試験の難易度を著しく高めている要因の一つが、試験が3段階の選抜方式で構成されている点です。
まず第1段階として、マークシート形式の「短答式試験」が行われ、ここで一定の得点を取れない受験生は足切りされます。
短答式を突破した受験生のみが、第2段階の「論文式試験」に進むことができます。
論文式は予備試験の最難関とも言われ、具体的な事例問題に対して法的構成を論述する、思考力と文章力が問われる最難関の試験です。
例年の合格ラインとしては、短答式試験が約6割、論文式試験が約5割です。
さらに、論文式試験に合格した者だけが「口述試験」に進むことができ、口述試験ではそれぞれの試験で求められる能力が異なります。
このように、受験生は多角的な対策を迫られ、一つの試験を突破しても次が控えているという段階的なプロセスにより、最終合格の難易度を高めています。
試験範囲が広い
予備試験が難しいもう一つの理由が、その広大な試験範囲です。
短答式試験では、憲法・行政法・民法・商法・民事訴訟法・刑法・刑事訴訟法の法律基本7科目に加え、一般教養科目も課されます。
論文式試験では、法律基本7科目に加えて、法律実務基礎科目(民事・刑事)と選択科目(倒産法や労働法などから1科目)の計10科目について、深い理解と論述能力が問われます。
それぞれの科目が非常に奥深く、膨大な量の判例や学説を正確にインプットし、それを事案に応じて適切にアウトプットする能力が必要です。
すべての科目を合格レベルまで引き上げるには、計画的かつ効率的な学習が不可欠であり、学習管理の難しさも合格を困難にしている要因です。
予備試験対策を早めに始めるべき!早期対策のメリット
「やめとけ」と言われるほど厳しい予備試験ですが、だからこそ早期に対策を始めることには大きな価値があります。
- 学部の成績アップ(GPA)にもつながる
- 司法試験合格率の高い法科大学院の入学を目指せる
- 法科大学院の在学中に司法試験対策もできる
- 最短で司法試験合格を狙いやすくなる
それぞれ詳しく解説します。
①学部の成績アップ(GPA)にもつながる
予備試験の対策を早期に始める大きなメリットとして、現役の学生の場合、大学法学部での成績向上に直結することが挙げられます。
予備試験で問われる法律基本7科目は、法学部の主要な講義内容とほぼ一致します。
予備試験の合格を目指して体系的かつ深いレベルで法律を学習することで、大学の授業内容の理解度が格段に高まります。
結果として、定期試験やレポート課題にも余裕を持って取り組むことができ、優秀な成績を収めやすくなるでしょう。
特に、法科大学院進学や就職活動で重要視されるGPA(Grade Point Average)の向上に直接つながるため、将来の選択肢を広げる意味でも非常に有益です。
予備試験対策は、現役の大学生はもちろん、法科大学院への進学を考えている人、法科大学院在学中に予備試験合格を目指す人にも大きなメリットがあります。
②司法試験合格率の高い法科大学院の入学を目指せる
予備試験の学習経験は、法科大学院の入学試験において絶大なアドバンテージとなります。
多くの法科大学院、特に司法試験合格率が高い上位校の入試では、法律科目の知識を問う論述試験が課されます。
予備試験対策で培った正確な知識と、実践的な答案作成能力は、入試で他の受験生に大きな差をつけることが可能です。
東京大学や京都大学、一橋大学といった最難関クラスの法科大学院への進学も、現実的な目標として視野に入れることもできます。
たとえ予備試験に合格できなかったとしても、質の高い教育環境で司法試験を目指せるという道が開けることは、大きな保険となります。
早期の学習は、法曹への道をより確実なものにするための重要な布石です。
③法科大学院の在学中に司法試験対策もできる
大学在学中に予備試験の学習を進めておくと、仮に法科大学院へ進学した場合でも、大きなアドバンテージを得られます。
予備試験対策を通じて、司法試験合格に必要な法律知識の大部分を既に習得した状態で、法科大学院での学びをスタートできるからです。
多くの学生が基礎知識のインプットに苦労する中で、自分は授業内容の復習や、より発展的な応用演習に時間を充てることが可能になります。
法科大学院の授業に余裕を持って対応しながら、司法試験本番を見据えた実践的な対策に集中できるため、学習の質を大幅に高めることが可能です。
時間的な余裕があれば、在学中の司法試験合格により一層近づけ、周囲から一歩リードするための大きな強みとなるでしょう。

④最短で司法試験合格を狙いやすくなる
予備試験ルートの最大の魅力は、法曹になるための最速ルートであるという点です。
大学在学中に予備試験に合格した場合、大学卒業後の4月には司法修習を見据え、7月には司法試験を受験することが可能になります。
法科大学院に進学する場合、既修者コースで2年間、未修者コースでは3年間の時間が必要となるため、予備試験ルートは2〜3年早く法曹としてのキャリアをスタートできる可能性があります。
そのため、法曹としての実務経験をいち早く積めるだけでなく、生涯年収の観点からも非常に大きなメリットです。
スピード感を持ってキャリアを築きたいと考える人にとって、予備試験への早期挑戦は極めて合理的な選択肢となります。
予備試験ルートがおすすめな人
次に当てはまる人は、予備試験ルートがおすすめです。
- 時間や費用をできる限り抑えたい人
- 大学卒の学歴がない人
- 就活をより有利にしたい人
自身の状況やキャリアプランを考慮し、予備試験が自分にとって挑戦すべき道かを見極めることが重要です。
それぞれ詳しく解説します。
①時間や費用をできる限り抑えたい人
法科大学院に通う場合、国立大学でも2年間で約160万円、私立大学では300万円以上の学費がかかるうえ、2〜3年間は学業に専念する必要があります。
経済的な事情や家庭の状況から、こうした時間的・金銭的コストを負担するのが難しい人にとって、予備試験は有力な選択肢です。
予備校を利用したとしても、総費用は法科大学院の学費よりも安く抑えられるケースが多く、働きながら自分のペースで学習を進めることも可能です。
法科大学院に通学する時間や費用を捻出できないものの、法曹への夢を諦めきれない人にとって、予備試験ルートは目標を達成するための現実的な道筋と言えるでしょう。
②大学卒の学歴がない人
法科大学院に入学するためには、原則として4年制大学を卒業していることが条件となります。
一部の大学院では、大学卒業と同等の学力があると個別の入学資格審査で認められれば受験できる制度もあります。
しかし、いずれも誰にでも適用されるわけではなく、そのハードルは決して低くありません。
一方、予備試験には受験資格の制限がなく、学歴や年齢、国籍に関わらず誰でも挑戦することが可能です。
そのため、高校卒業や大学中退といった、大学卒業の学歴を持たない人が法曹を目指す場合、予備試験ルートを選択するのが一般的です。
能力さえあれば法曹への扉が開かれているという点で、予備試験は非常に公平で価値のある制度といえます。
③就活をより有利にしたい人
司法試験合格後の就職活動において、予備試験に合格したという経歴は非常に高く評価されます。
合格率がわずか数パーセントという超難関を突破した事実は、卓越した能力と粘り強さの証明として、法曹界全体で認識されているからです。
特に、四大法律事務所をはじめとする人気の高い法律事務所では、予備試験合格者を積極的に採用する傾向が顕著に見られます。
もちろん、上位法科大学院の修了も優れた経歴ですが、予備試験合格という肩書は、それを上回る強力なブランドとして機能します。
将来、トップレベルの環境で活躍したい、あるいは就職活動で有利なポジションを確保したいと考える向上心の高い人にとって、予備試験合格はキャリア形成における最強の武器となるでしょう。
予備試験に合格するには何年かかる?1日何時間の勉強が必要?
予備試験の合格に必要な勉強時間は、法律知識のない初学者の場合、一般的に5,000時間〜8,000時間が目安とされています。
これは膨大な時間であり、具体的な学習計画に落とし込むとその過酷さがよくわかります。
例えば、合格に必要な時間を6,000時間と仮定しましょう。
1日8時間の勉強を毎日欠かさず続けたとしても、単純計算で約2年1ヶ月かかります。
社会人で働きながら学習する場合、平日に3時間、休日に8時間勉強できたとしても、1週間で31時間となり、6,000時間に到達するまでには約3年9ヶ月を要します。
だらだらと学習すれば時間が間延びするだけではなく、長期間になることで知識を維持するのが難しくなり、5年〜7年以上かかる可能性もゼロではありません。
このように、予備試験の合格には、継続的な努力が不可欠な長期戦になることを覚悟する必要があります。

予備試験に合格するための試験対策のポイント
予備試験という超難関を突破するためには、ただやみくもに勉強時間を費やすだけでは不十分です。
合格を掴み取るためには、戦略的かつ効率的な学習が不可欠となります。試験対策のポイントは次のとおりです。
- スタートは早いほど有利
- 司法試験本番を意識した勉強が大切
- 独学よりも予備校の活用がおすすめ
それぞれ詳しく解説します。
ポイント①スタートは早いほど有利
結論から言えば、予備試験の学習のスタートは早ければ早いほど有利になります。
合格に必要な数千時間という膨大な勉強時間を確保するためには、早期に着手することが絶対条件です。
特に大学生であれば、比較的時間に余裕のある1、2年生のうちから学習を開始することで、ライバルに対して大きなアドバンテージを築くことができます。
早期に法律の基礎知識を固めることができれば、その後の応用力の養成や弱点科目の克服、そして予備試験の肝となる論文対策に十分な時間を充てられます。
長期戦を戦い抜くための学習習慣を確立する意味でも、「思い立ったが吉日」の精神で一日でも早くスタートを切りましょう。
ポイント②司法試験本番を意識した勉強が大切
予備試験は、あくまで司法試験の受験資格を得るための「予備」の試験です。
したがって、その学習は常に最終目標である司法試験合格を見据えたものであるべきです。
予備試験の合格者のほとんどが司法試験にも合格していますが、予備試験に合格することだけを目標に据えてしまうと司法試験に落ちてしまうリスクも否定できません。
日々の学習においては、単に知識を暗記するのではなく、「なぜこの条文があるのか」「判例はどのような論理で結論を導いたのか」といった本質的な部分を常に意識することが重要です。
過去問を解く際も、出題の意図を正確に読み解き、採点者に伝わる論理的な答案を作成する訓練を繰り返しましょう。
ポイント③独学よりも予備校の活用がおすすめ
予備試験の広大な試験範囲と高い専門性を考慮すると、完全な独学での合格は極めて困難と言わざるを得ません。
合格者の大多数は、効率的に学習を進めるために予備校を活用しています。
予備校を利用する最大のメリットは、長年の指導実績に基づいて構築された、合格への最短ルートを示すカリキュラムに沿って学習できる点です。
質の高い教材や、プロの講師による分かりやすい講義、そして自分の実力を客観的に把握できる答案添削サービスは、独学では得られない貴重なものです。
受講料という初期投資は必要ですが、結果的に合格までの時間を大幅に短縮できる可能性を考えれば、非常にコストパフォーマンスの高い選択と言えます。
以下の記事では、予備校のカリキュラムや料金を比較解説しています。「どこの予備校を選べばいいかわからない」という方は、ぜひ参考にしてください。

まとめ
「予備試験はやめとけ」と言われるのは、合格率の低さ、必要な時間や費用といった明確な理由があるため、決して間違いではありません。
しかし、その厳しい道のりを乗り越えた先には、法曹への最短ルートや就職活動での圧倒的な優位性といった、計り知れないメリットが待っています。
特に、経済的・時間的な制約がある人や、学歴に関わらず実力で勝負したい人にとっては、挑戦する価値のある魅力的なルートです。
予備試験は安易な気持ちで合格できる試験ではありませんが、明確な目標意識を持ち、早期から戦略的な対策を講じることで道は必ず開けます。

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